short

□猫
1ページ/1ページ


朝だ。今は朝だ。そう朝なのだ。それなのにこの男ときたら、朝からベタベタと。起きたいのに動けやしない。
私は隣で寝ている明王に目を向けた。寝ている、と言っても目は開いている。
「お前の髪って細ぇよな」
そんな事を言いながら私に抱きついているのだ。明王は私の脚に自分の脚を絡めた。
ちょっとちょっと、これじゃ本当に布団から出られないじゃないか。
『脚、どけて』
言うと逆にぴったりとくっついてきて頬にちゅっと、キスを落として勝ち誇った笑みを浮かべる。
こいつ……。
今度は唇にちゅっとわざとリップ音を立てて、キスをした。
「部活もねぇんだからまだ寝てろよ」
言うと、明王は私が逃げないように押さえた。
昨日泊まったのが間違いだったなぁ。買い物行きたかったんだけど。
『明王、脚どけて。動くとこそばゆくて嫌なんだけど』
「へぇ…、じゃあ離れてやるよ」
そう言ってくれたけど離れず更に密着してくる。あらかわいい。
甘えたがりだなぁ。普段はそうでもないけれど休みの日はこうやってひっついて甘えてくる。そこが私にとって嬉しいし、なにより可愛い。
ぎゅうと、抱きしめ返すと明王は私の唇を舐めてまたちゅうをした。今度はさっきよりもちょっと長い。
離れる時に唇の端を舐めてきたので猫みたい、と呟くと明王が上目遣いでこちらを見ながらニャアと鳴いた。可愛いから今日はこのままゴロゴロしてよう。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ