紫の時空
□第3章
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驚かせるべくまず人型をとる。
人型をとることは高位の妖であれば造作もないことだ。
音をたてないようにして扉を開ける。
風散那が宛がわれている部屋は、寝台と衣装櫃が置いてある奥の部屋と机やら本棚やらが置いてある居間的な部屋の2つである。
寮に住む成績優秀者の特権らしい。
居間部屋には水や火を使っても大丈夫なようになっているので、着替えた後の身仕度や料理はこっちでやっている。
奥部屋はほんとに寝るだけの部屋である。
居間部屋を覗くと、風散那は椅子に座って髪を結っていた。
足音と気配を消して後ろから抱きついてみる。
「……おはよう」
「反応薄いなぁ…」
(こっちを見やしねぇ…)
あまりな反応に苦笑するしかない。
髪の毛を指に絡めてみる。
「風散那って、髪の量多い割には湿気で広がらないよな
」
「……髪質の問題じゃないの…?」
しばらくそのままの体勢で髪をいじってみる。
「……結えない」
「ちぇっ、少しは構えよー」
まぁ、もっともなことだが。
回していた腕を離すが、こっちに意識を向けさせたい。
人型から猫の姿になり、膝の上に乗ってみる。
するとチラッとだかこちらを見た。
「…今日は早く起きたのね」
『たまにはなー』
確かにあまり早く起きることはしない。いつもは朝食ができたあたりに起き出す。
『今日の予定は?』
「…今日は午前は座学、午後は実技。終わりは夕方になるかな…。お昼は自分で食べてね…」
『りょーかい』
食堂辺りにでも行っておこぼれに預かろうか。
風散那が立ち上がろうとする気配がしたので肩に飛び乗る。
外の貯蔵庫にある食材を取りに行くのにそのままお供した。