紫の時空

□第1章
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「今日の授業はここまで」

教鞭をとっていた教師の声で午前最後の授業が終わり、生徒たちは教室からぞろぞろと出ていく。

昼食を食べるために、大半の生徒たちは集団を作って、食堂へ行ったり、弁当を持って中庭に向かったりしている。

そんな生徒が多い中、1人で歩いている生徒がいた。


『おい、風散那』


1人で歩いていく生徒――風散那を誰かが呼び止める。

しかし、周りには彼女のことを呼び止めたような仕草をする者はいない。

風散那は立ち止まって近くの木を見上げた。低めの位置にある太い枝に1匹の猫が座っていた。

全身が真っ白な短毛の猫である。その澄みわたった空のような色の目で風散那を見下ろしている。


『今日の授業はもう終わりか?』


風散那は頷いて返す。


『じゃあ、帰って昼飯だな。あー、腹減った』


枝から飛び降りて、風散那の肩に着地する。

軽く爪が当たって、その痛みに顔をしかめはしたが、彼女はそのまま歩き出した。
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