レインボー・クリスタル

□赤の章 第1話
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「あー、いい天気ねー…」


甲板の上、船の縁に頬杖をついて海を眺めている者がいた。

彼女の名はフィリ・フェアリー。

この船の砲撃手を勤めている。


「いい天気だけど……暇だわ」


何故彼女は暇しているのか。

答えは簡単、船があまり動けていないからである。

今現在ほぼ凪状態で、帆船を動かせるだけの風が吹いていない。

しかも潮の流れもあまり強くないので、本当にゆっくりしか進んでいないのである。

そもそも砲撃手である彼女が活躍する場面はほとんど戦闘時しかないのだが。


「フィ〜〜リ〜〜」


海を眺めているフィリの背後から怨みがましい声がする。

何事かと振り返ると、航海士のユニ・サタンがいた。


「な、どうしたの? そんな怖い顔しちゃって」


弱冠引きながらユニに問う。


「あんた、あたしのアップルパイ食べたでしょ!」

「はい??」


全く身に覚えがない。


「なんで私がユニのを食べなくちゃいけないの」

「じゃあフィリ以外に甘いの好きな人がこの船に乗ってるとでも!?」


確かにこの船には女はフィリとユニしか居らず、他の船員たちも甘味をあまり食べない。

しかし、全く知らないことで疑われるのはごめん被りたい。


「ユニ、自分で食べたの忘れてるんじゃないの?」

「何? 白を切るつもりなの?」

「何でよ、知らないことを知らないって言っても何が悪いのよ」

「惚けたって許さないんだからね!」

「はぁ!? 勝手な疑いかけないで! 全然関係ないのに犯人扱いされるなんてごめんよ!!」

「なんですってー!!」
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