BRAVE10
□大切
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…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン……
私が自分の異変に気がついたのは、つい先日。
いつもは平気なのに
……それは才蔵と二人きりの時に限って始まるのです。
…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
一体何なのでしょうか?
ここ最近、気になって仕方がありません…。
終いには若にまで、
「大丈夫か、六郎?最近少し変ではないか?」
などと、心配される始末。
若にご心配をおかけするなど、もはや小姓の名折れ…。
……まさか、才蔵に変な術をかけられたのでは……。
そう考えた私は、真相を確かめるべく才蔵の所へと、向かおうとした…その時。
「六郎サン ♪」
背後から才蔵の声が…。
と、同時に耳に息を吹きかけられ……
…ビクっ!!
「…!…な、何をするのですかっ!才蔵!!」
「……プッ!クククッ…。六郎サンのその顔、マジ笑える!!」
「わ…笑いごとではありません!」
いっきに、顔が赤くなっていくのがわかります。
…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…
…またです。またあのいつもの動悸…。
今はこんな事に怒っている場合ではありません。…はやく原因を解明しなければ…!
「そんなことより、才蔵?あなたにお聞きしたいことがありまして………っん……ん!?」
「……六郎サンの唇は柔らけぇな」
「…な…なんてことを!」
唇を才蔵に舐められ、動揺する私。
ほんとに…なんてことをするのですか!あなたは!
一層激しくなる動悸……
どんどん赤くなっていく顔…。
恥ずかしさのあまり、しゃがみ込んでしまいました…。
この音、才蔵に聞こえなければいいのですが…。
「才蔵!私をからかっているのでしょう!?いいかげん、からかうのはよして下さい!」
「…いいや?別にからかってないけど。…だって六郎サンが可愛いから……ね?」
「!!!!??/////」
もう限界です。
「…何が……ね?ですか!もういいです!あなたがその気なら、私にも考えがあります!」
「…ちょっ!待てって六郎サン!」
「いいえ、待ちません!才蔵!」
「…ゲッ!」
……キィィィンッ!
「あなたに原因を聞こうした私が間違っていました!もう才蔵なんてしりません!……………えっ……」
そこには倒れているはずの才蔵はおらず……
「そんな悲しいこと言うなよ、六郎サン…。」
「!?!?」
またしても背後から声が聞こえてきたかと思ったら、次の瞬間…
…フワッ……
気付いたら、私は才蔵に抱きかかえられていて……
……って、ええぇ?!
「…や…やめて下さい!才蔵!
こ…こんなこと!恥ずかしいにも程があります!ますます動悸が激しくなっ……」
「…離さねぇよ、六郎サン…。」
「…えっ…」
「いくら六郎サンが俺を拒もうと、ぜってぇ俺は離さない。
どこまでも追いかけて、捕まえてやる。だから逃げんな!自分の気持ちに素直になれ!
…もう気付いてんだろ?その動悸の理由。……な?六郎サン?
……なんか俺に言わなきゃなんねぇことがあるんじゃねぇのか?」
……この動悸の理由であって、才蔵に伝えなければいけない言葉…
やっと、見つけた大切な気持ち…
……それは……それは……
「………才蔵……。…す…好きですよ……/////」
目の前を見上げると、私に微笑みかける才蔵の姿があって…
「……あぁ俺も。…六郎サンのことが好き。……ずっと大切にするから…」
…才蔵…。
これは『好き』という気持ちだったのですね。
口に出すと短いけれど、
深い意味をさすとても大切な言葉。
『好き』
あなたが教えくれたんですよ?
才蔵…。
だから私もあなたを離しません。
この『好き』と同じくらい大切なあなたを……