tns短編
□尾行?違うぜ、ついて行ってるだけ
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「……岳人」
「遅いぞ!亮、ジロー!」
「がっくん何やってんのー?」
「あ、ちょ、隠れろ!」
せっかくの休日。岳人から『すぐに来い!』というわけのわからないメールが来て、自分もだと言うジローと一緒に指定された場所に行くと、そこにはこそこそと周りを見渡す岳人の姿。
ジローの問いにこたえることなく、自分が隠れていた電柱の後ろに俺たちまで引っ張り込んだ。
「ったく、なんなんだよ」
「亮、ジロー、あれを見ろ」
文句を言うと、それすらも聞いていない様子の岳人は、前方を指さす。そこにいたのは…。
「あれ?名前だC〜」
「その通りだジロー!」
ジローの言葉に、よくぞ言ってくれた!とでも言いたそうな岳人。
「……名前がどうした?」
「いや、アイツどっかに出かける時は大体俺に誰と何処に行くとか言うのに言ってくれなくて」
「……はぁ」
「それに、なんか知らねーけどオシャレしてるし」
「…たしかに、いつもとは違う感じだな」
「だから誰に会いに行くのか気になってよー」
どことなくワクワクした様子で話す岳人。
……でも、岳人に言わずにオシャレして出かけるって、それって
「それって誰かとデートなんじゃない?」
さっきまで眠そうに俺と岳人の話を聞いていたジローが、少し不機嫌そうに放った言葉に、ピシリと固まる岳人。
は?こいつ、わかってなかったのか?いや…岳人に言わずにオシャレして出かけるなんて、どっかの男とデート、しか有り得ないだろ。
「がっくん、追いかけるなら早くしないと見失うよ〜?」
どことなく黒いオーラを晒し出しながら言うジローに、岳人は名前にばれないようにこっそりと足を踏み出した。
……て、
「おい、尾行すんのかよ、激ダサ」
確かに俺らに黙って男とデートするなんて少し胸糞悪い気もするし、どんな男なのか見定めたい気持ちもあるが、尾行なんてバレたら名前に怒られるぜ?
そんな俺の気持ちをよそに、岳人は俺を振り返り、笑顔で言った。
『尾行?違うぜ、ついて行ってるだけ』
そんなこんなで、名前は駅前のオブジェの前で相手を待っているところらしく、俺たちはそれをひっそりと隠れて見ている……んだが。
「どうしてこうなったんだ」
こっそりと溜め息をつく俺をみて、クスクスと笑う忍足。
「しゃーないなー、なんや面白そうな話聞いてもたし」
「お前ら全員暇人なのかよ」
ここに来るまでに、増えたのは忍足だけではない。
「おい、やはり今からでも連れ戻さねぇか」
「そんなことしたら名前に嫌われるよ〜、跡部ぇ。ただでさえ嫌がられてるのに、ね〜、樺地?」
「……ウ、ウス」
「で、でもバレたら名前先輩に怒られるんじゃ、」
「鳳うるさい!名前は俺が守るんだ!日吉、お前男が来たらソイツに古武術とやらでやっつけろよ!」
「向日さん、今自分で自分が守るって言ったんですからご自分でやっつけて下さい。俺を巻き込むな」
目の前で繰り出される会話にまたため息をつくと、隣で忍足がまた笑った。
今の会話からわかってくれるか?
ここに来るまでに、1人2人と増えて行き、最終的にはいつものメンバーが揃っちまったんだよ。
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