tns短編
□初対面@四天編
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自分たちと反対方向に足を進め始めた少女をみてホッと息をつく謙也。
「(これで今以上に白石のキャラが崩壊することはないな…)」
しかし、その謙也の考えは甘かった。
「なぁ、何か困ってるん?」
隣にいるはずの白石の声が少し離れたところで聞こえ、謙也はまさか…と少女が向かった方向に目を向ける。
「俺この学校の生徒やねん。困ってんねやったら助けるで?」
満面の笑みで彼女に話しかける白石だが、なんせ顔が近い。少女は困ったように眉をさげる。
「ちょぉ白石!困らせてんのはお前や!」
「なんやねん謙也…、俺はこの子が困ってそうやったから声かけただけやで?」
「(その笑顔なんやねん恐いわ!顔が俺のこと邪魔やって言ってるわ!)」
『あっあの!』
白石と謙也の小さな戦いが始まりそうだったが、少女の声によってそれもピタリと止まる。
『東京の…氷帝学園って所から、来たんですけど、…一緒に来た人と、逸れちゃって。たぶん…テニス部にいると思うんだけど、……連れていってもらえますか?』
そんな少女の言葉に、目を丸くする白石と謙也。
「お安い御用やわ。俺らもテニス部やし、ちょうど今から部活行くとこやねん。な、謙也?」
「あ、おん……ってか今、氷帝って言った?」
まだ表情は硬いが、白石の言葉に小さく息をつく少女。そして謙也の質問に、不思議そうにしながらもコクンと頷いた。
「せやったら、侑士知っとる?忍足侑士」
『ん…テニス部の忍足くんだったら知ってますけど』
「そうそう!テニス部の忍足侑士!俺、そいつと従兄弟やねん。忍足謙也、よろしゅうな」
『そ、そうなんですか…』
共通の知り合いのおかげか、心底ホッとしたような柔らかい笑みを浮かべる少女。
「先越されてもたなー…、俺は四天宝寺テニス部1年白石蔵ノ介。よろしゅうな」
少女の様子をみて顔を緩ませながら自分も自己紹介をし、握手を求めるように手を差し出す白石。
謙也はその間に白石が言った「謙也のくせに」とボソリ鳴った言葉を聞こえないふりをした。
『えっと…向日名前、私も1年です。よろしく…』
忍足と従兄弟だという謙也、そしてその謙也の友達の白石。
そんな繋がりがあるおかげか、いつも人見知りをする名前だが、今回はニコリと笑みを浮かべ白石の手を取った。
「あぁ…やっぱり手もやわこいんやな」
『?白石くん、?』
「蔵ノ介でええで、名前ちゃん」
『え、あの…』
「小さくて柔らかい手やな、ほんま」
『あの…白石く』
「エクスタシィィィィィイイ!」
『い、いやぁぁぁぁぁぁああああああ!』
白石にガバリと抱きつかれた名前は、泣きながら白石を突き飛ばし逃走した。
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