tns短編

□初対面@四天編
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――――ゾクッ


「…なんだろう、悪寒が」




キョロキョロと辺りを見渡す少女は向日名前。


跡部の用事の為なかば無理矢理連れられ、大阪の中学校にいた。




そんな少女を茂みからじっと見つめる影あり……。





悪寒の原因がソレであることにも気付かず、少女は逸れてしまった跡部を探そうと足を動かすのだった。











初対面@四天宝寺











「白石!」


「謙也?」




部活の時間になり、白石が部室へと向かう途中、呼び止められ振り返るとそこにはチームメイトの謙也の姿が。





「今日久しぶりに部活終わってから居残り練習せーへんか?」


「お、それえぇな。ほな俺オサムちゃんに頼んどくわ」


「おーきに!……って、なんやあの子」




彼らは放課後の練習の約束をしながら共に部室に向っていると、見たこともないような制服に身を包み、木に体を預けている赤髪の少女が目に入った。







『もー…無理矢理連れて来た癖に置いて行っちゃうんだもん。跡部くんのバーカっ』




少女はそう言って足元にあった石ころを蹴った。





















「あの……白石?」

「なんや、謙也」

「いや、なんや、じゃなくて…」

「言いたいことがあるならハッキリ言いや」

「じゃあ言うけどやな……、俺らなんで茂みに隠れてんの?」

「…………、」

「スルーかいぃ!」





謙也が嘆くのも無理はない。


白石は、少女を目に入れた途端硬直したと思ったら、少女と目が合う前に謙也を巻き込み近くの茂みに隠れたのだ。



そして白石は謙也の質問をスルーしたわけではない。赤髪の少女を見つめるのに必死で謙也の声が届いていないだけなのだ。









「……白石。もしかしてああいう子がタイプなん?」





彼女を見つめたまま動かない白石に、引き攣った笑みを浮かべながら尋ねる。

まー今回もスルーされるんやろうな。

そう思っていた謙也だが、その謙也の声に“待ってました”とでも言わんばかりの表情で白石が食いついた。







「謙也!見ぃあのサラサラの髪の毛しかも風に乗ってふわりと香るシャンプーのえぇ匂いクリンとした大きなネコ目華奢で色白かつ触ると柔らかそうな肌いかにも守りたくなるようなか弱いオーラ大人びた雰囲気を少し持ちながらも無邪気な言動」


「わ、わかった!もうわかったからやめて!白石のキャラが崩壊してまうぅぅ!(泣)」




息継ぎもなしに少女について熱く(少し変態的に)語り始めた白石を止める謙也。



もしかして今の自分たちの声で少女に自分たちが隠れて彼女を見ているとバレたのではないか、とハッと彼女に目を向けた謙也が見たのは、彼女がふるりと体を震わせる瞬間だった。








「(……なんか、白石がごめんな、名前も知らんけど。早よ逃げぇ)」





心の中で少女に謝る謙也であった。









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