tns短編

□初対面@立海編
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―立海視点




仁王は困っていた。



『う、っひ、く…』



自分のことを見て泣き出した小さい子に。





部活に出たはいいものの、氷帝との練習試合ということもあって、フェンスをぐるりと囲み黄色い声援を送る女子たち。

それに嫌気が差して、自分の試合まで…とサボっていると同じく校舎裏で気持ちよさそうにしている氷帝の部員を発見した。



真田のふりをして他校の部員を怖がらせてやろうと、ちょっとした悪戯心だったのだ。




しかし…、こんなに怖がらせるつもりはなかった。目の前の少年が泣き止む様子はない。


仁王は、【真田の姿のまま慰めるのは逆効果か、どうしたものだ、】と悩んでいたおかげで、自分の背後に近付く人の気配に気がつけなかった。






「仁王!貴様っ!」





柄にもなくビクリと体を強張らせて、後ろを振り返る仁王。そこには憤慨した様子の真田の姿。





「貴様…サボった上に俺に化けて他校の輩にちょっかいをかけるとは……、」




腕組みをし、仁王立ちしている真田。彼が次に言う言葉を簡単に想像出来た仁王は、自分の横でまだ泣いている少年を少し心配した。





「たるんどるっ!」

『……っ、!?』





例の言葉を発した真田に、やはり身を固くする少年。あーやっちもうたの、大丈夫かの?と少年の様子を伺う仁王だったが、その心配は杞憂に終わる。





「黙りなよ、真田。(黒笑)」

「…うむ」




いつの間に来たのか、少年は幸村に抱きしめられていた。


少年はよほど真田のことが怖かったのか、抱きしめてくれる幸村にしがみつき、静かにポロポロと涙を零している。









「うちの部員がすまない、怖がらせてしまったようだね。」



落ち着いてきた少年に、幸村が謝る。真田と仁王にも謝れ、と目で合図する。





「ちょっとお前さんをからかっちゃろうと思うてのう…。そんなに怖がらせるつもりはなかったんやが、すまんのう」


「うむ、俺もいきなり怒鳴って怖がらせてしまって悪かった」



小さく頭を下げた2人に、少し驚いたような表情をしながらも『こちらこそ、泣いて…ごめんなさい』と謝る少年。



「…しかし、今は試合中だろう。サボりは感心せんな」




真田の言葉に、少年は困ったような表情をする。すると、未だに少年を抱きしめている幸村は、そんな2人の様子をみてクスリと笑った。





「真田。氷帝の向日なら、今ブン太とジャッカルと試合中だよ」




そう言いながら少年の赤くて綺麗な髪の毛を撫でる。少年は髪に負けないくらいに頬を赤く染め、真田と仁王は不思議そうに2人を見ている。









「おーい、仁王ー!」

「次の試合、お前の番だぞ!」




全員で声の聞こえる方を振り向くと、試合を終えたであろう丸井とジャッカル。



2人は幸村の腕の中にいる少年を見て目を見開いた。








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