tns短編
□穏やかに
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残暑というものの、少しずつ涼しくなって、陽が短くなってきた。
終わってしまった夏を惜しむこともなく、俺たちはコートを駆け回る。
そんな俺たちを眺める変わらぬ姿。
『はーい、水分補給の時間だよー!』
彼女の声を聞き、休憩に入るチームメイト。
『はい、岳人』
「ん、さんきゅ」
笑顔で俺にドリンクを手渡す彼女に礼を言い、彼女が座るベンチに腰掛ける。
『今日は涼しいねー…』
秋風に吹かれサラサラと流れる髪を手に取った。
『ん?』
「お前、髪伸びたな」
『そう?』
くすくすと笑う彼女の髪は柔らかくて、思わずそのまま髪を梳いて、くしゃりと頭を撫ぜる。
『もーっ、ぐしゃぐしゃになるでしょ?』
「いいじゃん。」
『良くないっ!』
ニッと笑ってやると、むすっとした顔をする。……あー、可愛い。
「おーい、いつまでイチャイチャしてんだよ」
「練習始まるで」
呆れた顔した宍戸と、にやにやした侑士が迎えにきた。
『残りの練習頑張ってね』
「おうっ!」
柔らかい微笑みを浮かべて送り出してくれた彼女に、満面の笑みを向ける。そしたら、すっげー嬉しそうに笑うんだ。
穏やかに
俺たちの時間は進んでいく…、