tns短編

□好きで悪いか?
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(宍戸視点)









最近、岳人の様子がおかしい。



普段から携帯をよく触っているが、最近は常に携帯を確認している。それに、共に食堂で昼食をとった後、俺とジローと一緒にC組の教室に来て、俺たちと話をしてチャイムが鳴ると自分の教室に帰って行く。俺と話している間も、どこかそわそわとしながら教室を見渡している。



今日も昼食後に岳人は俺たちの教室に来た。ジローは机に伏せて寝てしまっている。岳人は俺と話しながらやっぱりキョロキョロしてる。…ったく、なんなんだよ。と思っていると、目の前にいる岳人が、どこかを見つめながら急に顔を赤くし、へらりと笑った。



「岳人?」

「……はっ、……なんだよ、亮」

「なんだよ、じゃねーよ!ったく…何見てんだ、よ」



岳人の見ていたであろう方を振り返ると、そこには読んでいる途中の本で顔を半分隠し、こちらを見ているクラスメートの姿。たしかアイツは…、学年で一番背が小さくて、可愛らしい容姿に控えめな性格で、大人しいから目立たないが密かに男子からもてている、名前は苗字名前だったかな。俺が振り返ったことにより、苗字とパチリと目が合う。すると彼女は慌てて既に半分隠れてしまっている顔を全て本で隠してしまった。



「亮!」

「な、なんだよ」



そんな俺と名前のことを見ていたのか、すごい形相で俺を睨む岳人。



「名前のこと見てんじゃねーぞ!」

「はぁ?なんでお前がそんなこと言うんだよ」



呆れてそう言った俺の目の前で、また顔を赤く染め上げる岳人。……本当、こいつどうしたってんだ?そんな疑問を抱いていると、意を決したようにこっそりと口を開く。



「今、アイツに猛アピール中なんだよ。そのうち俺のものになるだろうから、あんまり見てんじゃねーぞ」

「は?……岳人、もしかしてアイツのこと?」



少し照れながらも、はっきりと勝気なことを言いきった岳人。はっきりと自分の気持ちを言わない岳人を、からかってやろうと問うた俺に向かい、ほんのりと頬を赤く染めた岳人はそっぽを向いてただ一言つぶやいた。



好きで悪いか?




(わ、また岳人くんと目が合っちゃった)

(最近いつも教室に来るし、メールも毎日…)

(…あれ?もしかして私の気持ちばれてる?)






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