tns短編

□スキンシップも必要です
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(スキンシップはほどほどに、続編)










「切原さん、帰りストテニ寄って行こうよ」

「は?お前まだテニスすんの?」

「いいじゃん、相手してよ」

「…ったく、しゃーねーな」





部活が終わって、着替えて部室を出ると、いつものように名前が待ってた。

今日はどこに遊びに行くのかと思ったら、部活では男テニと一緒に練習したっていうのにストテニに行ってテニスをしたいらしい。






「お前本当にテニス好きだよな」

「うーん、そうでもないよ」

「いや、お前の頭の中テニスしかないんじゃないか、って時々思うぜ」

「それは間違ってるよ、切原さん」

「なにが間違っ」

「だってテニスより、切原さんの方が好きだもん」



俺の言葉を遮って、そう言った名前。


今俺は、きっと目も当てられないくらい赤い顔をしているんだと思う。(だって名前がすげぇ嬉しそうな顔してる)








俺に英語を教えるために、名前が俺の家に来た日。

今までと違った、やけに真剣に告白をされて、今までしてきたセクハラ染みた行為を辞めると宣言した名前。



その宣言通り、あの日から名前の俺に対するスキンシップはなくなった。(まったく触れて来ないのだ、逆に怖い)


そして、そのかわりに毎日一緒に下校する。

いろんな所に寄り道しながら、名前を駅までおくり、また明日、と言って別れる。




そんな俺たちを見かけたクラスの奴らは、付き合ってるのか?と聞いてくるが、決して俺らは付き合っているわけではない。

名前は俺のことを好きだと言うが、俺は名前に好きだと言ったわけじゃない。


付き合ってない、と言えば、嘘だ、と言うクラスメート。付き合っているように見えるのか、と少し嬉しく思ったことは、俺だけの秘密だ。



きっと、俺が名前に好きだと言えば、俺たちは実際付き合うことになるんだと思う。

けど、どうしても俺は好きだと言えない。


…だって恥ずかしいじゃん?今まで散々軽くあしらってきたんだぜ?

今更、好きだ、なんて……言えねぇよ;;






「また明日」

「あ、待って切原さん」



駅に着き、いつも通りの言葉を口にして立ち去ろうとすれば、名前に呼び止められた。


なんだよ、と振り返ると、少し申し訳なさそうな顔をした名前。




「明日から、ちょっと用事があるから、一緒に帰れない」

「…は?」

「そ、そういうことだから。じゃあね」



早口にそう言い放つと、名前は走って駅に入って行った。






「え、一緒に帰れないって。」


別に毎日一緒に帰ろうと、約束をしていたわけではない。

はじめは、名前が勝手に俺のことを待ってて、俺も断る理由がないから一緒に学校を出て、寄り道をするのが楽しくて、なんとなく毎日一緒に帰っていただけだ。



なのに、どうして……



「…痛ぇ」



胸が痛い。用事ってなんだよ。




















「切原、お前と名前ちゃんが付き合ってないって本当だったんだな」

「…は?なんだよそれ。そう言ったじゃん」



その数日後。

朝教室に入ると、そう話しかけてきたクラスメートの言葉に、少し嫌な予感がした。



「昨日みたんだ。名前ちゃんって丸井先輩と付き合ってたんだな」

「は?なにそれ、俺聞いてねぇけど」

「いや…だって、昨日一緒に帰ってたぜ」



…そう言えば、名前が俺と帰らなくなってから、丸井先輩はさっさと着替えて帰って行くし、俺が帰るときには既に名前も帰っていたかもしれない。




「あ、俺も丸井先輩と名前ちゃんが一緒にいるの見たぜ」

「お前もかよ」

「しかもさ、一緒にいるだけならいいけどさー……」

「なに?」

「あー…、キス、してたんだよね、2人」



そいつの言葉に、俺は頭の中が真っ白になった気がした。






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