tns短編
□スキンシップはほどほどに
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「マジでさ…、こういうのやめた方がいいって」
「どうして?」
「どうして、って…お前、これが俺じゃなくて仁王先輩とかだったらこのまま頂かれてるぜ?」
「大丈夫だよ」
「は?なんでだよ」
「切原さんにしかしないから」
そう言って、名前は俺の唇に軽いキスを落とし、俺の上から退いた。
「ちょ、//」
「やっぱり切原さん可愛い。顔真っ赤だよ」
「お、お前なぁ!!///」
「前から言ってるじゃん。私は切原さんが好きなの、だから切原さんにしかしない」
「…そんな告白、嬉しくねぇ」
確かに、これは何度も言われたことがある。
いや、でも…そう言われたって、誰が本気だと思うかよ!!
こいつは油断するとすぐに、俺にキスしたり尻触ったりしてくる。
俺はそれが嫌で、赤面しながらも思いっきり嫌な顔をするんだけど、こいつはその俺の顔が好きらしい、変な奴。
「ねぇ」
「もう!なんだよ!」
「本気だからね」
「…は?」
「本当に切原さんのこと好きだから」
真剣な顔をして言う名前に、何故か何も言えなかった。
これも何度も聞いた言葉だけど、いつもは、冗談言うな、って俺が怒って、ごまかすようにまたコイツが俺にセクハラをするんだ。
でも…なんか今日は、……否定しちゃいけねぇ気がした。
「じゃあ…もう、お前…俺にセクハラすんな」
「なにセクハラって。可愛らしいスキンシップでしょ」
「っだから!…遊ばれてんのか、本気で好きだから触ってくんのか、わかんねぇだろ」
「うわ、切原さん…それは女みたいだよ」
「うるさいっ!お前のせいだろ!」
「……わかった。じゃあ違う方向性で攻めてみる」
「…はぁ、なんか怖ぇ」
けど、コイツになら何されても…まあいいかな。
なんて考える俺も、こいつに負けず劣らず変な奴なのかもしれない。
ジュースを飲んで少しゆっくりして、勉強を再開し。
気が付いたら名前が帰る時間になっていたので、帰り支度をし、玄関までおくって行こうとしたら、間の悪いことにリビングに母さんと姉貴がいた。
「あら、女の子のお客さん?」
生意気なコイツに礼儀正しい挨拶なんかできるのか、と心配して横をみると、見たこともないような柔らかい笑みを浮かべた名前がいた。
「すみません、お邪魔してます!はじめまして、立海女テニ1年の名前といいます。先輩にはいつもお世話になってます」
そう言ってペコリと頭をさげた名前。
「あらあら、礼儀正しい子ね。赤也の母です」
「私は赤也のお姉ちゃんだよ、今日はなんでうちに?」
「えっと…少し先輩のお手伝いを、」
再試のことを言っていいのか、と遠慮したのか、言葉を濁して俺をみる名前。
「…こいつ帰国子女だから、英語教えてもらってた」
「あら!赤也の方がお世話になってるんじゃないの?」
「そんなことないです、誰にでも苦手なことはありますから。私は外国育ちだからたまたま英語が得意で、…いつもお世話になっている先輩の役に立てて嬉しいです!」
可愛らしい笑みを浮かべてそう言った名前に、母さんと姉貴は胸を撃ち抜かれたらしい。
そうして2人に気に入られた名前は、夕飯に誘われ、一緒に夕飯を食べ、今は3人で仲良く片付け中だ。
しかし……こいつは、誰だ。
「彼女だなんて…本当に違うんですっ!」
え、お前そんな顔できたの真っ赤じゃん。
「赤也ったら、こんなに可愛らしい子が近くにいるのに好きにならないなんて…」
姉貴うぜえ。
「……先輩にも、好みがありますから」
苦笑とかはじめてみた。見下した笑みしかみたことねぇぞ。
「名前ちゃんがお嫁に来てくれるなら大歓迎なのに!」
いやいや母さん何言ってくれてんだよ。
「…私は嬉しいですが、先輩は私のこと何とも思ってないんですよ。……私の一方的な片想いですから」
そ、そんな悲しい顔すんなよ。ってか俺が悪者みたいじゃん!
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