tns短編
□好きだ、なんて
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雨でD1とS1の試合が次の日になったが、なんら問題ねぇ。
俺たちが必ず勝つ。
「なぁ、1番前でみてる女、美人だけどめちゃくちゃ浮いてねぇ?」
「ああ…昨日も来とったな、あの人。…どっかで見たことあるんやけどな」
試合前、向日と忍足の会話が聞こえ、2人が見ている方に視線を向けると、そこにはお嬢様丸出しの格好をした宝城がいた。
しかも、その脇にはSPを従えて、コートに一番近い所に座っている。……明らかに浮いてやがる。
「景吾さん!」
しかも、俺の視線に気付いたのか、駆け寄って来やがった。
溜め息をつく俺の横で、ええ!?と驚く向日に、納得したような表情をする忍足。
「こんにちは、景吾さんの婚約者の宝城美音と申します、以後お見知りおきを」
しかも、勝手に自己紹介しやがった。
「宝城、もう試合が始まる、戻れ」
「はい、景吾さん試合頑張って下さいね」
「……ああ、」
後ろで向日と忍足が何か言っていたが気にしねぇ。
もう試合が始まる…………、
越前との試合。
最初は優勢だったが、巻き返してきやがって、長い長いタイブレークが俺たちの体力を奪っていく。
ついには視界が真っ暗になった。
どうやら、俺と越前はコートに倒れ込んだらしい。
「景吾!」
倒れる間際、アイツの声が聞こえた気がした。
「立ちなさいよ、景吾!」
何も考えられないはずなのに、アイツの声が頭に響いた気がした。
「…ゲームセット!ウォンバイ越前、7−6!」
青学の歓喜の声に混ざって、アイツの泣き声が聞こえた気がした。
「景吾さん、目が覚めましたか?」
俺が目を覚ましたのは、氷帝の部員が乗っているバスの中で、
最初に目に入ったのは、膝枕をしているらしい宝城だった。
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