gntm短編

□報われない幼馴染10題
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『おっはよー!』




天気のいい朝、いつものように幼馴染である銀時の部屋に突入する。



そしていつものようにまだ寝ている銀時を起こす。







「……はよ、」

『あれ?』






なんて事にはならず、部屋のドアを開けて飛び込んだ私を迎えたのは、もう身支度を整えて、何処かへ出かけようとしている銀時だった。








『何処か出かけるの?』

「…はぁ」






私の問いにため息を吐いた銀時の表情はどこか緊張しているように見えて、それでいてとてもかっこよかった。


そしてそんな銀時を見て、私は理解してしまった。







『ふふ…わかった!』

「…んだよ」

『おデートでしょ!隣のクラスのゆんちゃんと!』

「なっ!//」






一瞬で顔が赤くなった銀時に、正解だね!なんて言って笑う。






『へー!やっとデート誘えたんだ!』

「あー…これだからお前に見つかる前に出かけようと思ったのによぅ…」

『へへん、桜子ちゃんの鼻の良さを舐めちゃいかんぜよ!』

「あーうぜぇ」





うんざりした顔をする銀時に少しだけ不安になる。からかいすぎたかな?なんて。






「なんつって」

『ん?』

「ありがと、なんか…緊張してたの、ふっとんだわ」






そう言って笑う銀時は…なんか、遠くに行っちゃいそうな表情をしていて。

手を伸ばせば届く距離にいるのに、今伸ばせば銀時は近くにいてくれるかもしれないのに。



そんなことを考えて伸びていきそうな腕をおさえる。





『当たり前でしょー?ゆんちゃんと上手く行かなかったら承知しないんだから!頑張ってキューピッドした私の身にもなってよね!』

「お前キューピッドって面かよ」

『なんだとーっ!』




怒ってポカポカと銀時の背中を叩く。


一頻り笑うと、銀時は私の頭を一撫でし、ありがとうと言いながら部屋を出て行こうと背を向けた。





『っ銀時、』

「ん?」

『……行ってらっしゃい』




精一杯の笑みを浮かべて言った私に、銀時は眩しい笑顔で行って来ますと告げ出て行った。





涙なんて出ない。もうそんなもの枯れ果ててしまったから。





きっと上手くいくと信じている。ゆんちゃんはいい子だし、銀時だっていい奴だし、2人はお似合いだもの。


なんでわかるか、って?







いちばん近くで彼の恋を見てきたもの






当たり前でしょ?





  
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