gntm短編

□恋する君に恋をした
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(高杉←夢主←銀時)(紅桜風味)











「どうして傍においてくれないんだろ」



 遠のく高杉を乗せた船を眺めて桜子が呟く。



「戦力にならない上に、言いつけの守れない女はいらないのかな」



 そんなんじゃねぇよ、アイツは



「不安を抱えてただ待ってるだけの女なんて嫌だっただけなのに」



 辛そうにそう呟いた桜子をみると、嫌でも昔のことを思い出しちまう。







「晋助っ!」


「な、!?桜子!?」


「…っ、だめ、だよ晋助、無傷で帰って、来ない、と…」


「ちっ、馬鹿野郎しゃべるな」


「しん、すけ…私…少しでも、役に…た、て…た?」







 まだ攘夷戦争が盛んだったころ。桜子は「待ってろ」と言った高杉の言葉を無視して戦場にやってきていた。そして、後ろから斬りかかられそうになった高杉を身を挺して庇ったのだ。



 気を失った桜子を俺に預け、高杉は修羅の如く戦場を駆けた。そして一気に片を付け、俺に預けていた桜子を抱き上げ足早に救護班の元に向かった。



 幸いにも桜子の傷は致命的な怪我にはならず、回復も早かった。







「なん、で…」


「言いつけの聞けねぇ女はいらねぇんだよ」


「晋助…」


「二度と俺の名を呼ぶんじゃねぇ」







 しかし、桜子と高杉の間には、修復不可能な亀裂が入ってしまった。





 それから間もなく攘夷戦争は終結。着いて行きたいと言った桜子を無視し、高杉は姿を消した。…らしい。それより早くに姿を消した俺がそんなことを知るはずもなく。江戸でばったり桜子に遭遇したときは驚いた。2人はなんだかんだ一緒にいると思っていた。








 つい先程、船の上で俺とヅラが言った言葉。今度会ったら全力で高杉をぶった斬る。それを聞いて桜子は遠くにいる高杉をも守るように俺たちの刀の前に立ちはだかった。



「そんなことさせない!晋助は殺させない!私が、何度だって私が盾になる!」



 その桜子の言葉を聞いて、高杉は少し顔を歪め、その後喉で笑った。





「女になんぞに守られなくても俺ァ死なねぇよ」


「晋助っ」


「二度と俺の名を呼ぶなと言ったはずだ」





 高杉の言葉に傷ついたような辛そうな顔をする桜子を抱き上げ、ヅラと一緒に船から飛び降りる。泣きじゃくる桜子を胸に抱き、地上に降りると真選組から逃げる為にヅラはすぐにその場を去った。










「晋助…」



 呼ぶなと言われた名を何度も呟き、空を見上げる桜子は綺麗だった。



 アイツが…高杉がコイツを遠ざける理由、俺にはなんとなくわかる気がする。アイツはずっと壊すことだけを目的に戦いを望んできた。しかし…目の前で大切な女が自分を護って斬られることが、壊れそうに…死にそうになることが、どれだけ恐いことなのかアイツは理解しちまったんだ。



 全てを壊す。その為なら手段を選ばない奴だからこそ。きっと傍にコイツを置いておけば、いつしか剣に迷いが生じる。戦場では迷いを覚えた奴から死んでいく。そして…そうやって高杉が死にかけたら、桜子は何度でも身を挺してアイツを護るんだろう。





「いつか…いつかみんなが戦うときが…きてしまうんだよね」


「ああ…それは、避けられない。アイツの気が変わらないうちはな」


「そうなったら、私は晋助を護るよ。私が全力で晋助を護って…全力で止めてみせる」




俺を見据えてそう言った桜子は、やはりこの世のなによりも綺麗だった。







恋する君に恋をした




(きっとあの血に塗れた桜子を見た時から…)

(俺もこんな風に守られたいと…バカな考えを持っちまった)

(叶うはずもないのに…俺ァ、宇宙一のバカヤローだな)












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