gntm短編

□僕を一人にしないで
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(動乱編風味)











何故だ。




「私は貴方には従いません」




何故なんだ。




「私が慕い、付き従うのは生涯あの人だけです」




僕がこんなにも、




「あの人は、貴方に気をつけろと仰いました。今ではその意味がよくわかります」




君を欲しているというのに。




「伊東さん。私は真選組を護る為ならば貴方を殺すことも厭わない」




真選組の為ならば手を汚すことも構わない、と。




「本来なら貴方が何をしようと知ったこっちゃない。しかし、」




僕を見据える視線にゾクリと何かが背中を這う感覚がした。




「それによって真選組が…、土方さんが危ない目に遭ったら、ただじゃおきませんから」




君は土方の為なら何でもするというのか。







君と初めて会った時、僕は一瞬で彼女に心を奪われた。



自分にこんなにも優しく笑いかけてくれる女性がいるなんて、こんなにも美しく笑える女性がいるなんて、今まで知らなかった。



この女性は僕の妻になる為に生まれてきたんだと思った。



だが、彼女の隣にはいつも土方がいて、2人で微笑みあっている。



―――そこは僕の居場所だろう。



何度となくそんなことを思った。彼女の隣は僕の居場所だ。…やっと出来た僕の居場所なんだ。





彼女だってそれを望んでくれていると思っていた。



だからこそ、近藤を暗殺し、土方をも亡き者にし、真選組を建て直しトップに立つ僕の隣、という君にふさわしい席を用意したというのに。





「土方さんを、探しに出てきます。見つかるまで戻りませんので、そう近藤さんに伝えて下さい、伊東参謀」







……ああ、頼むから





僕を一人にしないで





(僕を置いて去っていく君には、)

(土方を探す為に僕に背を向ける君には、)

(僕の小さく呟かれたそんな願いは届かないのだろう)





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