gntm短編

□もう泣かないと決めたのに
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今日も今日とて、血は流れる。



いつだって、気付いた時には周りは血の海だ。それが誰の血なのか、そんなことわかるはずがない。そこに転がっている血に塗れた身体すら、仲間のものか、それとも敵のものかすら判別不能。



もうこんな光景見飽きた。



何の為に剣を持ったか、それすら忘れただ剣を振り回す日々に、護れず増えていく仲間の亡骸。今日こそは皆でかえろうと、今日こそは護りきってやると、そんなことを考えていたのは随分昔の話だ。





「桜子、」



「……銀時、」





現れた銀時だって多くの血を浴びている。それは私とて同じだ。何も心を痛めることはない。ここに転がる奴らだって、闘いを……最期まで闘うことを望んだんだ。それを止める権利は持ち合わせていないし、護る必要だってなかったはず。





「どうして、」



「………桜子」



「何故昨日まで共に笑っていた者が血まみれなんだ…」





どうしてこんなに胸が痛む。私はもう心に鍵をかけたはずなのに。目の前の敵だけを見据え、後ろなんか気にしないと心に決めたはずなのに。





「…桜子、心が痛ぇのは当たり前だ」



「……、」



「共に生きた仲間なんだからよぉ」





闘いに参加したくて参加した。共に闘いたくて剣をとった。私は…仲間を護りたくて剣をとったんだ。それでも私は自分の身しか護れない。むしろ仲間が私を護ってくれる。それが…辛くてたまらないんだ。



いつしか私は、仲間が死ぬことに慣れた。…慣れた、フリをしたんだ。仲間が怪我をしようと、命を落とそうと、平気なフリをした。痛む心に鍵をかけ、その鍵を凍り付かせたんだ。





「っ、……ぅ、」



「……コイツらの、墓…つくるか」



「……っ、うん」



「お前らはよくやった、ってさ…送り出してやろーぜ」





もう泣かないと決めたのに




(銀時はいつでも、私の凍り付いた心を溶かしてくれるんだ。)




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