gntm短編
□鈍感と人見知り
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よく晴れた昼下がり。
久しぶりの非番。
珍しく副長や沖田隊長からパシられることもなく、用もなく街を歩く。
(することがないというのも…)
まったく暇だ。
こんなことならミントン仲間と約束でもしとくんだった。
(急に“お前は今日は休め”とか言うんだもんな副長)
『…あ、あの』
(やっぱ屯所戻って素振り(ミントンの)でもしようかな)
『〜〜っ、あのっ!』
「へぅあっ!?」
後ろから声がするのはわかっていたけど、まさか自分に向けての声だったとは気付けず。
急に服をぐいと引っ張られ変な声をあげてしまいながら振り返ると、そこには薄い黄色の大人しい柄をした着物に身を包んだ女の子。
髪は日本人らしく真っ黒で艶やかで真っ直ぐ。化粧も薄く、香水の匂いよりシャンプーの匂いの方が強い。
『?あ、あの…』
「…あぁすみません、何か?」
ボケーっと彼女を見ていたようでそう問うと、彼女は持っていたカバンからハンカチを取り出した。
なんだ?と思いながらも、そのハンカチに既視感を覚えた俺は彼女の手元を凝視していたようだ。
『こ、この前、絡まれていたところを助けていただきまして!ほっ本当に助かりましたありがとうございますっ!』
「え」
顔を赤く染め、綺麗にアイロンのかかったハンカチを俺に差し出す彼女。
「(副長か隊長か?あの人こんなハンカチ持ってたかな?)ご丁寧にありがとう。渡しとくよ、」
持ち主が誰かは、屯所に戻って聞けばいいかと思いながらそう口にすると、彼女はバッと顔をあげ、きょとんとした顔で俺をみた。
『え、あの…』
「うん?」
きょとんとした顔から焦ったような顔にかわる。オロオロしながら一生懸命俺に話そうとする彼女に、思わずクスリと笑みが零れると、彼女は耳まで赤くして俯いてしまった。
(なんだ?)
『………す、』
「す?」
フルフルと震えながら俯いたままの彼女に、調子が悪いのかと顔を覗き込もうとすると、ズササッと後退り、何かを言おうとするので続きを促したら、
『すすすすすすみませんでしたぁぁぁぁぁあ!』
「あ!え?ちょ、ちょっと待ってぇぇえ!?」
何故か彼女は走り去ってしまいました。
取り残された俺は呆然とするしかなく。
(…とりあえず屯所に戻ろう)
小さくため息をついて、そのまま足を屯所に向けた。
(そう言えば…俺今日隊服じゃないのに、よく真選組だってわかったな、あの子)