企画小説

□そばにいるよ
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―ードーン!

突然鳴り響いた大きな音に、ガバッと慌てて起き上がる。


ふと周りを見渡し、ああそうか今日は芥川家に泊まりに来たんだ、と周りで寝こけている3人組を確認する。…今の大きな音は何だったんだろう?夢だったのかな。


そう思い再び横になろうとしたときだった。



―ードーーン!バリバリ…

閉まっている筈のカーテンが一瞬照らされ、その直後に先ほどよりも大きな音が鳴った。雷だ。


「…よく眠っていられるね」


その大きすぎる音に少しの恐怖を抱くが、相も変わらず寝息をたて眠る3人組を見ると和らいだ。


…なまえは大丈夫だろうか、




こんな夜更けに彼女の部屋を訪ねるなんて、夜這いのようだな、なんて少しドキドキと胸を高鳴らせながらも、彼女が雷におびえているかもしれないから彼氏として確認するため、と自分に言い聞かせ足を進める。





「なまえ、?」

そっと部屋を覗き、寝息が聞こえるか寝顔が見られたらそのままドアを閉め戻るつもりだった。

しかし、俺の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で丸くなった布団の塊だった。


彼女の名を呼ぶと、その塊はビクリと震えた。その中心に彼女が包まっているようだ。


「萩せんぱい…、?」

「うん、そうだよ」


そっと近づきその塊に触れると、中からなまえが顔を出した。


その目は少し赤くなっていて、涙が滲んでいた。



「すごく大きな音がして、目が覚めちゃった」

にこりと笑って見せると、少しホッとしたように頬を緩めた彼女だったが、


―ーゴロゴロ…


外が一瞬光り、少し遅れて聞こえた音にまたビクリと震え体を強張らせた。




「大丈夫だよ」

その塊ごと抱きしめ、涙の滲んだ目尻に口づけを落とすと、彼女は驚いたように瞬きをした。


「さっきより離れてるし、もうすぐおさまると思うよ」

「萩せんぱい…」

「それよりも、」


塊の中から彼女を引き寄せ、その体を直接ぎゅっと抱きしめる。



「雷が怖くて心臓ドキドキするより、せっかくのお泊りなんだから俺にドキドキしてほしいかな」


そっと囁き軽く唇を重ねると、みるみるうちになまえの頬は赤く染まっていった。



「いつも萩せんぱいにドキドキしてるもん」

「本当?」

「本当だよ」


そのあともなまえのベッドの上で抱き合い、笑い合いながら会話をしていた間、何度も窓の外は光り遠のいていく雷の音も聞こえていたが、なまえは俺だけを見つめてくれていた。






「なまえ?」

ふと返事がなくなり、どうしたのかと抱きしめている彼女を見ると、いつの間にか眠ってしまったようだった。


優しく頭を撫でると、ふと笑みを零す。


「……可愛すぎるでしょ」



これ以上ここにいて、朝ジローたちに尋問されるのも嫌だし、なにより俺はなまえを抱きしめたまま彼女のようにこんな安心して眠れるわけがない。

そっと体を離し、自分がさっきまで眠っていた客間に戻ろうとした、が



「っ、はぁー…」


それはなまえの手が俺の服をしっかりと掴んでいることで叶わなかった。





「大丈夫だよ、なまえ」




―ーそばにいるよ



俺は結局なまえを抱きしめたまま彼女のベッドで眠った。


朝なまえがどんな顔をするのか楽しみだな…。

それ以上に恐ろしい尋問が待っていることは考えずに幸せな眠りについた。





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