企画小説
□そばにいるよ
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「なまえ!」
「「………ノックしてよ」」
「うわ!滝!?」
芥川家、いつのもように家出してきた岳人の目に飛び込んできたのは、そっと寄り添っている幼馴染とチームメイトの姿でした。
なまえと約束していた週末。俺は必要最低限の荷物を持って学校へ行き、部活が終わるとそのまま彼女の家へ直行していた。
「萩せんぱい、いらっしゃい」
「お邪魔します。本当にいいのかな?」
「お母さんもいいって言ってるんだからいいのよ」
彼女からの「泊まりに来ない?」というお誘いに、ご両親はいるのかとか、ジローはどうしてるのかとか、いろんなことを考えたけど…。
なまえからの可愛いお願いについ首を縦に振ってしまい、今日俺は芥川家に泊まりにきた。
通された部屋はいつも通りなまえの部屋。しかし、小さな荷物は彼女の手によって客間に運ばれていた。
そのことに少しホッとしたのはなまえには内緒。
「なまえ」
「ん?」
彼女の部屋でいつものように寄り添い、共に画集を眺める。静かな時間が過ぎていく様が、とても幸せに感じ、
「っ、萩せんぱ」
「…かわい」
寄り添った彼女のその頬に軽く唇を触れさせると、そこが赤くなり愛しく思った。
何か言いたげに俺を見つめるなまえの唇へ、俺のそれを重ねようと思った、そのとき、
「あ…」
俺の声に不思議そうに首を傾げたなまえも、廊下の先から聞こえてくる音に深くため息をついた。
「…がっくんだ」
「だね」
そのせわしい足音に、人物を特定したなまえは少し残念そうに俺と距離をとり、飛び込んできた向日を恨めしそうに睨んだ。
「で?なんで俺まで呼ばれたわけ?」
「どうせなら大勢の方が楽しいだろ?」
そして結局向日は宍戸も呼び出し、今はリビングでみんなでゲームをしているところだ。
俺の小さな荷物だけ置かれていた客間には、向日の家出道具と、宍戸の荷物も置かれていて、すでに4組の布団が敷いてある。ジローもそこで寝るんだろうね。
「あー!がっくんひどい!死んじゃった!」
「ははっ、なまえが弱いんだろ!」
「よし、なまえの敵はお兄ちゃんがとってやる!」
「まかせた、ジロ兄!」
「おいジロー!それは岳人じゃなくて俺で、ああああ!」
騒いでいる4人を見守っていると、ゲームオーバーになったなまえが小さく体を震わせ、咳をした。
「なまえ」
咳をした彼女に近寄ると、少し困ったように笑う。
「ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかな」
「部屋に戻った方がいいんじゃないの?」
「そうする」
ゲームに夢中になる3人にそっと声をかけ、俺におやすみ、と挨拶をするとなまえは自室へと戻って行った。
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