企画小説
□絵筆とラケット
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「何か描いてたの?」
来た時から気になっていた、布を被せて隠してあるキャンバスに目をやり、尋ねてみると、彼女は肯定の返事をして頬を掻く。
『1週間位前から描いてたんだけど、昨日すごく調子良くて。描くのが楽しくなって止まらなくてね。気付いたら深夜だったの』
「……もしかしてお風呂あがりに髪も乾かさずに没頭してたんじゃ」
『うわあ凄い萩せんぱい、大正解です』
「こら」
目を輝かせる彼女の額をぺちりと弱く叩き、ムスッとする彼女の頭を撫でる。
「ただでさえ体調崩しやすいんだから。気を付けないと駄目でしょ」
『……、』
「なまえが学校休む度に、俺の心臓嫌な鳴り方するんだから」
彼女は学校を休む連絡はいれてこない。彼女にとって熱が出たり風邪をひいたりするのは日常茶飯で、そんなことで俺を心配させまいと黙っている。
毎度、休んだ事を回りから聞かされる此方の身にもなってほしいものだが。
『ごめんなさい、萩せんぱい』
「…いいよ。」
しょんぼりとしてしまった彼女の額に口づけを落とす。頬をほんのり赤く染めた彼女が窺うように顔をあげるので、優しく微笑んでやると、安心したように笑った。
「で、そんなに夢中になって何を描いてたの?」
俺の質問に、彼女は嬉しそうに笑ってベッドから立ち上がり、キャンバスにかかっていた布を取り払った。
『じゃーん』
「……………、」
『どう?』
キャンバスに描かれていたのは、ラケットを振るう俺だった。
その表情はとても楽しそうで、躍動感のあるその絵画から、コートに吹く風や飛び散る汗やその匂いまで漂ってきそうで。
『萩せんぱいがテニスしてるところ、好きなの。私、人物画は苦手なんだけど、…どうしても描きたくて』
照れたように笑う彼女を抱き寄せて、その唇に自分のそれを重ねた。
絵筆とラケット
(っ、萩せんぱい?)
(…とても素敵な絵を、ありがとう)
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《あとがき》
三万打企画にてリクエストしてくださった友愛様に捧げます。気に入らない点がありましたら、修正致しますのでお気軽に申付け下さい!
ヒロインの設定や背景等、とても詳しく書いてくださったので、……すみませんっ結構端折りました!(←)出会った時の事とか、ヒロインはどんな子とか…。あああ、薄っぺらいお話になってしまいすみません!
そして久しぶりのテニプリ夢…しかも滝さん!ってことで、誰やねんコイツ、ってなってますよね、ごめんなさい。
こんな感じになってしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
うらら