企画小説
□今宵君に
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「ね、ねぇどこに行くの?」
「秘密ですってば!」
「だって…急に部活なしになってるし、レギュラーのみんなは早退するし、かと思ったら赤也に拉致られるし…」
「ちょ、拉致られるってなんすか!」
「家に帰ろうとした私を!何の説明もなしに!この車に引きずり込んだのは誰よ!」
「……俺っすね」
私は立海テニス部のマネージャーで、
今朝、いつも通り学校に行き、いつも通りに朝練をした。
解散の時に、幸村くんが『今日の放課後は部活無しにしたから』って急に言って。
でも、何故か驚いてるのは私だけで、周りのみんなは普通に返事してた。
変だなーと思ってたら、なんとレギュラー全員が午前中で学校早退してたんだよ?信じられない、何か用事かな?
って心配してたんだけど、授業が終わって暇だし、とりあえず帰るか、ってことにした私。
そんな私を校門で待ち構えてたのは赤也だ。
赤也は何の説明もなしに、私を待機していた車に押し込んだ。
驚いて理由を聞くと、『どこに行くかは秘密っすけど、いい所に連れてってあげます』としか言ってくれない。
「だいぶ走ってるけど、まだ着かないの?」
「んー、たぶんもうちょっとっすよ」
「…たぶん?」
「あ、ほら!見えてきたっ!」
赤也の声に外を見ると、そこにはお城か、ってくらいの大きな屋敷が。
「遅かったじゃねぇか、あーん?」
じきに車が止まり、車を降りると、そこには何故か氷帝の跡部…が?
「切原ご苦労だった。次の仕事へ迎え」
「へーい」
「なまえ、お前はこっちだ」
「え、……え?」
跡部の言葉に、赤也は屋敷の中にかけていく。
私は不思議に思いながらも、着いて来い、という跡部に仕方なく着いて行った。
「コイツを頼む」
「かしこまりました」
「え、なに?なんなの?」
たくさんある部屋の一室に連れて行かれ、その部屋の中に放り込まれると、跡部の意味のわからない言葉。
思わずおろおろと周りを見渡してみると、どうやらここはメイクルームのようだ。
「跡部、なんなのこれ」
「あーん?黙って着替えやがれ。終わったら連絡をくれ」
「かしこまりました。お嬢様、こちらへ」
「え、えーーー?」
メイドさんにそう言うと、跡部は部屋を出て行ってしまい、私は3人のメイドさんにかこまれた。
「…し、しんどい」
「何言ってらっしゃるんです、まだ着替えてメイクをしただけですよ」
「うう〜、」
あの後、何故か私はドレスを着せられ、髪をいじられ化粧を施された。
「できましたよ、お嬢様」
メイドさんがそう言い、私に手鏡を渡してくれたので、それを覗き込んでみる……と、
「うわ、…本当に私?」
そこにはいつもみる自分じゃない顔がうつっていた。
「似合ってるじゃねーの」
「あ、跡部…」
「ドレスも、髪も、似合ってる。最高に綺麗だ」
「ちょ、恥ずかし…///」
いつの間にか部屋に戻って来ていた跡部に褒められ、顔に熱が集まるのを感じる。
そんな私の前に、跡部が跪いた。
「お手をどうぞ、お嬢様」
「う、はい……」
恥ずかしく思いながらも、伸ばされた手に自分の手を重ねると、跡部はそれに小さく口づけた。
「行くぞ」
「うん。……って、どこへ?」
「着いてくりゃわかる」
……ごもっとも。
結局私は最後まで行先を知らされず、跡部に手を引かれ歩いた。
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