企画小説

□こっち向いて、御嬢さん
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「こら」

『きゃあ!』




妙を道場まで送り、近くの電柱に隠れていた奴に後ろから声をかけると、その肩は大きく跳ね上がった。





『だ、旦那ぁ!驚かせないでくださいよ』



涙目で振り返ったのは、みょうじなまえ。黒い隊服を着ているからわかると思うけど、税金泥棒さんの一員。




「お前レズだったの?」

『は、はぁあ!?なんで』

「だってアイツのことストーキングしてんじゃん」

『違います!お妙さんの身辺警護ですよ!』




いや…どんだけ慌てんだよお前。




「そんなことお前んとこの大将の仕事でしょうが。なんでお前がしてんの」

『っ、…近藤さんは、今忙しいから』




私がかわりに…お妙さんの、姐さんの護衛を。


そう言う彼女の顔はどこから見ても好きでストーカーしているようには見えなくて。姐さん、と口にするのがすごく辛そうに見えて仕方ねぇ。








「お前さ…」

「ん?万事屋じゃねぇか」




チッ、タイミング悪ぃな!

後ろからかかった声に振り返るとゴリラ。噂をすれば、ってやつだな。





『近藤さんっ!』

「おぉ、なまえ。今日もお妙さんは元気か?」

『っ…はい!お元気そうですよ!今はもう帰宅してらっしゃいます。』





近藤を見つけると、コイツはまさにご主人様に褒めてもらった犬のようだ。尻尾がはえているなら、ブンブンとちぎれんばかりに振っているんだろう。

それも、近藤の質問によって垂れ下がるんだけどな。一瞬寂しそうな顔をしたが、それを打ち消すように笑みを張り付けた。





「いつも悪いな、なまえ」

『いえ!姐さんに何かあったら困りますからね』

「……そうだな」



ニコニコと笑う彼女を見て、近藤も何故か思い詰めた顔をしている。……もしかしてコイツ。





「しなくていいんだぞ?俺の代わりなんて」

『え?…なんで』

「なまえ、お前は大切な仲間だ。…幸せになってもらいたいと思ってる。」

『…近藤さん?』





真剣な顔つきをした近藤の言葉に、彼女は不安そうな表情をする。何を言われるんだろう、そう思ってんのかね?


近藤はそんな彼女の頭を優しく撫でると、いつも通りに笑った。




「仕事が一通り終わったんだ。これからは俺が今まで通りお妙さんの身辺警護を!」

『……頑張ってくださいね、近藤さん』

「おう!ありがとうななまえ!」




少し寂しそうに笑った彼女は、妙の元へと駆けて行く近藤に手を振った。




「なまえ!今日はもうあがっていいぞ!たまには万事屋に遊んでもらえ」

『え?』




振り返った近藤の言葉に、彼女は目を丸くした。そして近藤は俺を見やり、寂しそうに笑って見せた。








「…じゃあ、飯でも食いに行くか」

『あ、はい…』




近藤に言われたからか、コイツにしては珍しく大人しくついてきた。いつもは犬みたいにキャンキャンうるさいんだけどな。







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