企画小説
□こっち向いて、御嬢さん
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「は?今なんて」
「だから……依頼があるんですよ」
にっこりと笑った妙の言葉に、何故か悪寒が走る。
…お前からの依頼でいい目にあったことがないんですけどォ!
自分の口元が引き攣るのを感じる。ええ…聞きたくねぇ、絶対面倒くせぇこと言ってくるって!
「銀さん?」
「は、はい?」
「何か月新ちゃんにお給料払ってないか御存知?」
「え、えーと…2カ月くらい、かなァ?」
俺の返事に妙の目がギランと光る。…おいおい、おっかねぇ
―ズガンッ
「ちょ、危ねぇな!」
どっから薙刀出しやがった!他のお客様が引いてるだろうがァ!ってか今完全に俺を仕留めるつもりだっただろォオ!
「2カ月ですって…?教えて差し上げましょうか銀さん。」
笑みを絶やさず、俺の座るソファーに突き刺さった薙刀を引き抜くと、妙は手のひらを俺に向けてきた。
「5か月ですよ、5か月。いい加減にしてもらわないと、うちも困るんですけどね…」
そう言うと妙は、俺の目の前にあったパフェの器を握りつぶした。
…依頼受けなかったら俺、コロサレルなこりゃ。
「…で?依頼って?」
「後をつけてくる人が増えたんですよ」
は?またストーカーかよ、見た目は美人かもしんねェけど、中身は凶暴なメスゴリラだぞ、物好きがいるもんだなァ
「んなの、お前ならいくらでも追い払えるだろうが」
「それが……」
困ったように俯く妙。なんだ?まさか近藤より強くて歯がたたない相手なのか?
「…とにかく、私には追い払えないんですよ。銀さんにしか頼めないんです」
おい…いよいよ可笑しいな。いつもは一緒にいる新八や神楽がいないのも、俺にしか頼めないから?……相手はどんな奴なんだ
と少し真剣に考えていると、妙がちらりと後ろを気にするように振り向いた。
「今もいるのか」
「ええ…たぶん。ほら」
あの子ですよ
ぼそりと周りに聞こえないように俺に囁かれたその声に、妙の視線の先を辿ると……
『っ!』
俺たちの視線に、気付かれたと悟ったのか、バタバタと店を出て行く後ろ姿。それには、とても見覚えがあった。
「あいつ…、」
「…引き受けて、くれますね?銀さん」
真剣な妙の目に、全てを見透かすような妙の目に、俺は深くため息をついて頷いて見せた。
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