企画小説
□天国と地獄
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「……ん?」
部活が終わり、居残り練習をした帰り。
ふと満開の桜の木が目に入り、近付くと聞こえてくる寝息。
(おいおい…誰か寝てんのか?春になったって言っても風邪ひくぞ…)
放っておくことも出来ず、寝ている奴に近付き声をかけようとすると、目に入ったのは見慣れた赤髪だった。
『……んー、…う』
「…なまえかよ」
気持ちよさそうに、桜の木に寄りかかって眠っていたのは幼馴染の向日なまえだった。
…なんで春休みな上に今はマネ業しなくていいのに学校にいるんだコイツ。
「おい、なまえ!起きろ、風邪ひいちまうぞ!」
俺はとりあえずなまえに声をかけて起こすことにした。放っとくと本当に風邪ひきそうだ。
『うー…ん、…亮ちゃん?』
「お前なんでこんな所で寝てたんだよ」
『桜…みてたら、眠くなって…』
そう言いながらも再び目を瞑ってしまいそうななまえの頭を軽く叩く。
また寝たら俺が背負って帰らないといけなくなるだろ!
『亮ちゃんも一緒に桜みよ!』
「はぁ?もう帰るぞ」
『あっちの方今年もいっぱい咲いてるみたいだよ!』
「あ、ちょ、待てって!」
今まで眠そうにしていたなまえはどこにやら。
嬉しそうに笑って俺の腕をひき、なまえは桜の木が植わっている場所を目指して走り出す。
…なまえが遅くなると岳人がうるさいけど、無理やりにでも帰ろうとコイツの腕を引き返せない俺は、やっぱりなまえに弱いんだと思う。
「ちょっと待てなまえ」
『んー?』
「これ着とけよ、風邪ひかれたら困るし」
そう言って俺が渡したのはさっきまで着てたジャージ。
嬉しそうに受け取って羽織ったなまえだが……、
『亮ちゃん、これおっきいよ』
「逆にぴったりだったら恐いけどよ」
『ふふっ…ありがとね亮ちゃん!』
「っ…、ほら!桜見に行くんだろ!早く行こうぜ!//」
『うんっ♪』
ダボダボなジャージを身に纏ったなまえは可愛…、じゃなくてだな…。
早い所桜の木の下まで連れてってやろう。
岳人たちもだと思うけど、俺だってなまえが喜ぶ顔を見るのは好きだからな。
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