企画小説
□姫争奪戦!
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「なまえ!」
『はーい!なんですか、土方さん!』
俺の呼び掛けにひょっこり現れたのは向日なまえ。綺麗な赤髪のおかっぱに、くりんとした大きな猫目をした少女だ。
コイツはある日突然俺たちの前に現れ、幼子が泣くように泣きじゃくった。どうやら違う世界から来てしまったらしく、只今元の世界にかえる手立てを模索中だ。
「巡回に行く。総悟を連れて来てくれ」
『げ』
「……げ、とは何だ」
『だって沖田さん怖いんだもん』
口を尖らせて言うなまえは総悟を探しに行く様子は見てとれない。
「怖いとはなんでさぁ。こんなにも可愛がってやってるのに」
『ひあぁぁぁぁああ!』
……またやってやがる。
総悟はよくああしてなまえにちょっかいをかけているみたいだ。
『お、おおおおきたさんはなしてくださ』
「えー…なまえの背中が抱きしめてーって言ってるんでさぁ」
『そんなこと言ってな…』
顔を青くしながら抵抗するなまえを軽々と抱き上げ自分の腕におさめる総悟。
おい…お前何寛いでんだよ、今から巡回なんだけど。
「沖田隊長、何やってるんですか?なまえちゃん嫌がってますよ」
『!(パアァ)退くんっ!』
「わっ!いきなり飛びついたら危ないよなまえちゃん」
「「…チッ、山崎のくせに」」
「ちょっと!副長も隊長も聞こえてますからね!?」
どこからかやって来た山崎を見つけると、みるからに顔を明らめ、総悟の腕から飛退き山崎に抱きつくなまえ。
どういうわけかなまえはひどく山崎に懐いており、此奴が屯所にいる間はずっと引っ付いている。
「チッ…山崎がいたら山崎。山崎がいなかったら土方。なんで俺には懐かないんでぃ」
ぼそりと呟く総悟。悔しそうに幸せそうに戯れる2人を睨み付けている。
いや……お前、懐かれたいならアイツが怖がることやめてやれよ。
「おーい!なまえちゃーん、トシー総悟ーザキー!」
『あ、近藤さんだ』
もう1人。なまえは近藤さんにも懐いている。
「なまえちゃんは今日も可愛いなぁ!」
『近藤さんは今日もゴリラだね!』
「ん?んんん?そ、そうだね…」
懐いて……、いる、はずだ。
笑顔で毒を吐いたなまえに、少し涙目になりながらもデレデレとした顔でなまえの頭を撫でる近藤さん。
まあ…軽く一回りは歳が離れてるし、可愛がるのも無理はねぇ。
「今晩、みんなですまいるに行かないか?」
「何言ってんだ近藤さん、コイツら未成年」
「わー嬉しいでさぁ、酒飲み放題ですかい?」
「だから!お前未成年だからぁぁあ!」
近藤さんの提案にすぐさま却下しようとするが、嬉しそうに食いつく総悟。
その横でなまえまで目を輝かせている。
『すまいる?』
「ああ。お妙さんの職場だよ」
『妙姉の?!』
“妙”という単語に更に目を輝かせるなまえ。
……そう言えば、前一緒に志村家に近藤さんを引き取りに行った時にひどく可愛がられてたな。
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