劣等感

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もう夕暮れ時か…。土方さんと山崎から鬼兵隊の女について聞いた後、俺は再び街を歩いていた。

…圧倒された。あの手捌き、そしてさっき。一歩も動けなかったんだ。あんな恐怖心、今まで一度たりとも感じたことはない。それを少し嬉しく思ってしまう自分に、とことんぶっ壊れていると嘲笑した。

「「あ。」」

気を紛らわそうと立ち寄った団子屋で、思いもよらぬ人物との対面。

「…おじさん、ありがとう、また来るね!」

店主へ満面の笑みを浮かべたソイツは何事も無かった様に俺の横を通り過ぎ、

「おい」

んな事させるわけねぇだろ。肩を掴むとその細さに驚く。そんな俺を余所に、ソイツは笑って振り返る。

「沖田さん、さっきぶりですね。私のこと覚えてくれたの?せっかく着替えたのに。」
「あんな強烈な出会いをしたんでぃ。忘れる筈ねぇだろ、高杉姫仍さんよぉ。」

俺の言葉に彼女は目を丸くし、くすくすと小さく笑う。

「あの監察、本当に優秀なのね。」

不審がる団子屋の店主には一言また来ると伝え、彼女の手をひいて近くの公園へ来た。

「こうしていると、きっと恋人にみえますね」

そう言って俺の隣に座る高杉姫仍。何故笑っていられる。俺なんか恐れるに足りないのか。

「殺しはしないわ。だから、しまってよ。殺気がダダ漏れで痛い。」

眉を下げて苦笑する彼女は普通だ。そう…さっきも思ったが普通なのだ。

「アンタも、人としてぶっ壊れてやすね」

きっとコイツは俺と同類だ。

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