tns短編

□尾行?違うぜ、ついて行ってるだけ
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「どうしたの?みんな揃って。楽しそうだね」




いきなり自分たちにかかった声に驚き、俺たちはそろってそちらを向く。そこには、店内にいるはずの滝さんが少し黒い笑みを浮かべながら立っていた。







「よ、よお萩之介…ぐっ偶然だな!;」



焦ったように口を開いたのは跡部さん。でも声は裏返っている。それにしても…あの跡部さんがこんなに怯えるなんて、滝さんって……。向日先輩や宍戸さんも心なしか顔が青ざめてます。





「景吾、とぼけなくていいよ。最初からつけて来てたでしょ?嫌がる後輩たち引き連れて。宍戸と忍足も…君たちはこういうのを止める係でしょ?」

「わ、悪い…」

「すまんなぁ、なんや楽しそうやったからなぁ」



滝さんの言葉に、さらに顔を青くする宍戸さんに、面白そうに笑いながらこたえる忍足先輩。…対照的すぎる。





「でも滝ばっかり狡いC〜」


怯える跡部さんや向日先輩とは違い、拗ねた表情をして言うジロー先輩。そんなジローをみて、滝さんはクスリと笑った。




「…明日になったらそんなこと気にならなくなるから。今日は帰りなよ」



滝さんのそんな言葉に、その場にいた全員で不思議そうに首を傾げる。するとまた滝さんはクスリと笑った。





「鳳、日吉、樺地、迷惑をかけて悪かったね。」

「「「い、いえ」」」


「宍戸、忍足、ちゃんとみんな帰らせてね」

「おっおう;」

「はいはい。」































そんなこんなで、昨日はその場で解散しました。滝さんは今日になったら気にならなくなる、と言ったけど、何かあるんでしょうか?…もう部活も終わり、部室で着替えているところなんですけど。





『みんなお疲れ様ー!』





そんなことを考えていると、部室のドアが勢いよく開く。ドアを開けたのは名前先輩だったようで、笑顔で部室に飛び込んできた。





「名前?今日は先に帰るって言ってなかったか?」

『うん。えへへ…』



向日先輩の問いにはにかむ名前先輩。みんなそんな彼女をみて不思議そうな表情をしている。







『これ!みんなに!』





そう言って名前先輩が全員に1つずつ何かを配る。それは当然俺にもで。なんだろうと手に握らされたものを見ると、





『大変だったんだよー。頑張ったんだから、みんなつけてねっ』




手作りのミサンガ。ユニフォームの色でつくってある。






「すっげー!かっちょE〜!」

「こんなのいつの間につくったんだ?」

『えっと、昨日』

「昨日1日で頑張ってつくったんだよね、名前」




名前先輩の後ろから現れた滝さんに、名前先輩は嬉しそうに、うんっと頷いた。






『昨日萩に手伝ってもらいながら頑張ってつくったんだー。今度の休み試合でしょ?だからミサンガつくろうと思ったんだけど、手芸屋さんにユニフォームの色の刺繍糸買いに行くにも、岳人の持って行って岳人に気付かれたらバレちゃうし。でも萩は出ないらしいし、手芸屋さんに付き合ってもらうついでに手伝ってもらったの』




ニコニコと笑いながら話す名前先輩を見ていると、こちらも自然と頬が綻ぶ。ちらちとまわりを見渡すと、皆さんも同じようだ。







「せっかく部室に顔出したんだし、洗い物とかしてる子たち手伝ってくるね!」



そう言って部室を出て行く名前先輩。残された俺たち。……何故か滝さんから冷たいオーラが流れ出ている気がします。






「……なんか、滝、ごめん」




向日先輩の言葉の後に、忍足先輩と俺を除く全員の頭がガバッと下がった。







「…まぁ、わかればいいんだよ。」






そう言ってクスリと笑った滝さん。










滝さんだけは敵にまわしちゃだめなんですね…、肝に銘じておきます。




自分が出て行った後の部室で、俺たちが冷や汗をかいていたことなんて、きっと名前先輩は知らないんでしょうね…。










おわり。






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