この桜の木の下で

□第四章 恋慕
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「ありがとな、奈倉。あと2週間、諦めずに捜してみる。」


そう言うと、静雄さんは優しく笑いかけてくれた。


そんな些細な事でも嬉しくなり、自然と頬が熱くなる。


「うん…。頑張ってね」


俺は俯いたまま食事に集中するようにして、真っ赤っかに染まっているであろう顔を隠した。


何なんだよ自分!
全然らしくない…。


「…ちょっと、外の風にあたってきます」


「…あぁ。風邪引くなよ」


静雄さんの忠告に分かってますよと返し、外に出た。

外の風は少し冷たく、火照った頬を撫でるように冷ましていった。

あまりにも気持ちがよくて目を瞑り口元が緩んだ。


そして、次に浮かんだのは…


静雄さんのさっきの優しい笑顔…。


その瞬間心臓が跳ね、また顔が熱くなった。

あんな笑顔、3週間一緒に過ごしてたのに初めて見た。
多分…あれで最初で最後だろう。


俺が…静雄さんと過ごせる時間は


「あと…2週間…」


2週間あるけど、まともに顔を合わせられる時間は少ないだろう。


静雄さんは日がたつに連れて津軽の事を捜す時間が増えている。



もっと…もっと静雄さんと一緒に過ごしたい。



「何考えてんだろ…馬鹿みたい」


変な事を考えてる自分に苦笑し、
呆れていると


「何考えてたんだ?」


背後から静雄さんの声がした。


「なっ…!静雄さん!!」


「意外だな。奈倉でも何か馬鹿らしい事考えんのかぁ」


そう言って、俺の隣に来るとさっきとは違う、かっこいい笑顔を向けてくれた。


その笑顔にまた顔が火照り心臓が暴れ出した。


目が離せられない。


「お前、顔真っ赤だぞ!熱あるんじゃねぇか!?」


「えっ?…あっ、いや!違います!!大丈夫です!!」


静雄さんの言葉で我に返り、顔が真っ赤な事を知られ、かなり自分が焦っている事が分かった。


静雄さんはならいいんだがと言い、夜空に目を向けた
何やってんだよ自分…
と呆れて溜め息を吐く。

「なぁ、奈倉」


「はい…?」


「今まで、世話になったな」


そんな言葉聴きたくない。
聴いたら、もう静雄さんとはいられなくなる。
もう世話にならないからって言われてるような気がして。


嫌だよ、そんなの。


離れたくない。


なぜなら……


  なぜなら…?
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