シズイザ短編集
□夏休みの始まりは俺達の最後
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─終業式前日─
「ねぇ、シズちゃん…。」
『…なんだ?』
放課後。
いつも通りシズちゃんと追いかけっこして只今とある廃ビルの屋上で休戦中…。
いつもならこの休戦中に話し掛けると怒鳴る、または無視するシズちゃんが珍しく普通に応答した。
「シズちゃん…珍しいね。今日は怒鳴らないし無視しないんだ。」
『…うるせぇよ。』
そういうとシズちゃんは俺を一瞬見てまたプイと顔を反らした。
「ねぇ、シズちゃん…。明日から夏休みだね。」
『あぁ、そうだな。だからなんだ?』
「シズちゃんは冷たいなぁ…。明日…は、まだ追いかけっこ出来るけどさ…。明後日からは全くできなくなるんだよ?寂しくないの?」
すると、シズちゃんはキョトンとした顔でこちらを見たあと急に笑いだした。
『ぷ…あっはははは!寂しいわけねぇだろ!何言ってるんだよ!お前だって寂しくねぇだろ?どうしたんだよノミ蟲!あー腹いてぇ!』
失礼だなこいつ。
俺は寂しいから聞いたのに。
腹抱えて涙まで流しながら笑ってやがる。
『夏休みぐらいしか平穏に暮らせねぇのによ。つーか、どうせ新学期始まったら追いかけっこするだろうが。』
「…どうだろうね。」
そういいながら俺は苦笑した。
シズちゃんは、何も知らないんだね。
まあ、別にいいんだけどね…。
『?…どういう意味だ?』
「さぁ?どういう意味だろうねぇ?明日も追いかけっこできたら、教えてあげなくもないよ!」
『はぁ!?』
「じゃあ、俺は帰るよ!じゃ〜ねぇ」
俺はシズちゃんにひらひらと手を降って屋上から出て行った。