この桜の木の下で

□第二章 真実
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俺は、この桜の木の少し下にある小さな小屋のような所に住んでいた。
遠目だが、俺の城が見え、少しくらいなら状況を掴む事ができる、とてもいい場所だ。


「狭いけど、どうぞ」

「ありがとう…わりぃな」

それから俺の今住んでいる家に着いて、おにぎりと味噌汁を食べさせてやった。
城に戻れたならもっといいものを食べさせてあげる事が出来たのだが、今俺の城は俺らを襲撃した奴らが住み着いているようだし…。
本当に鬱陶しい奴らだ。

「そういえば旅人さんの名前はなんていう名前ですか?」

俺が質問すると、その男は吃驚した顔で俺の事をじっと見てきた。
何か悪い事でも言ったかと心配していると

「…なんで知ってるんだ?」

「…はぁ?」

「いや、だからなんで俺が旅人だって事知ってるんだ?
…まさか、知り合いだったか!?」

急に変な事を聞かれ、思わず笑ってしまった。

「ぷっ…ふははははは!!
違いますよ!心配しなくても初対面です!しかも、その服装からして旅人でしょう。ここらへんの人じゃなさそうだし、初対面でもあなたは旅人だって事分かる人なんか沢山いますよ!」

「そうか、俺物忘れ酷いんだ。…で、もし知り合いなら名前なんて覚えてないって…いや、お前が俺に名前聞いてきた時点で知り合いじゃねぇな…。」

「ははっ、その通り!」

「あぁ、そうそう、俺の名前は平和島静雄ってんだ。」

その名前を聞いた瞬間凄く嫌な予感しかしなかった。

「そういや、お前なんて名前なんだ?」

「あぁ、奈倉って言います。」

本名を名乗れば、すぐに広まってあいつら〔敵軍〕が殺しに来るだろうと思い、ここらへんの人には奈倉と言う偽名を使っていた。

「そういや、静雄さんは津軽とどんな関係なんですか?」

名前を聞いた瞬間嫌な気がしたと同時に津軽と関係があるのか気になって聞くことにした。もしかしたら、ただ偶然同じ苗字なのかもしれないとほんの僅かな希望を膨らませながら。


「あぁ、平和島津軽は俺の親父です。」

その瞬間、心臓がドクンッと大きく弾み激しく動きだした。

「なんか、折原とか言う将軍に親父の刀裁きと言うか……とりあえず凄く強い奴だからとか言って『俺の軍に来てくれ』と頼まれたそうで、断ればいいのによぉ、なんかその将軍がまだ少し幼くて心配だからって行きやがったんだ。その将軍は俺とだいたい同じくらいの年だったらしくてよ。…だったら自分の子も心配しろよってんだ。」

そういうと静雄さんは少し怒った表情になって話を続けた。

「それで、いつ頃だったかな?俺が20歳の時に母親が急に倒れてよ。多分、親父の事が気にかかってだと思うから会わせてやろうと思ってな。でも、親父を捜し始めてもう1年か。母さん、元気してっかな。


「静雄さん、とてもお母さん思いですね。っていうか静雄さんは今21歳ですか!?なら俺の1つ年上ですね!俺、もうすぐしたら20歳なんです。」

と、どうでもいい話をしていて平常を保っていたが、内心凄く焦って叫びたいくらいだった。


後編へ続く。
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