この桜の木の下で

□第一章 再会
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あれから三年が経ち、桜の花も満開になった頃、俺はあいつに出会った。
いや、再会したと言ってもいいだろう。
初めて会ったはずなのに俺が好きだった相手にあまりにも似すぎていたから。





あれから俺は毎日のようにあの桜の木に通い続けた。
驚いた事にあの日、俺はあの桜の木も燃やす勢いで火を付けたのに次の日、見に行ってみるとまだあの桜の木は残っていたのだ。
津軽を燃やした部分だけ焦げていて少し欠けていたけど、それ以外の所は何ともなかった。
あれはもう奇跡としか言えないだろう。
そんな訳で俺は、津軽はその桜の木になったんじゃないかって…。
阿保らしいけどそんな気がした。
それで俺は毎日この桜の木に通い続けたんだ。
津軽がそこにいる気がするから。
津軽に会っている気になれるから…。
そして今日も俺はあの桜の木へ足を進ませた。
遠くに桜の木が見えた頃、少し焦げた部分に人影が見えた。
「…?……誰だろ…あれ…?」
俺は気になって、無意識に桜の木に向かって走っていた。
その人影の顔がはっきり見えた時、俺は心臓が止まるかと思った。何度も目をこすって確かめ、少し距離を縮めて息を呑んだ。
だって、その人影の正体は間違いなく津軽だったから…。
「…嘘…だろ…?」
どうして津軽がいるのか、必死に考えた。
「…幽霊…?」
考えた結果、そんな考えしか思い浮かばなかった。
他にも生き返ったんだとか、有り得ない考えも思いついたけど、さすがにそれはないだろうと思った。でも、何故かどうしても生きているのか確認したくて、津軽の頬に手を添えてみた。
「!…暖かい!…なんで…?」
幽霊なら冷たいはず。というか、幽霊なら触れられないはずなのにしっかり触れていて、しかも暖かい。
俺は嬉しくて嬉しくて、早速津軽を起こして家に連れて帰ってやろう!と声を弾ませた。
「津軽!津軽だろう?さぁ早く目を覚まして!一緒に家に帰ろう?」
俺は津軽の肩をしっかり掴み揺さぶった。

「…んっ…つ…がる?」

やっと起きた津軽は俺をゆっくり見上げて、急に俺の肩を掴んだ。

「お前…さっき津軽って言ったよな!?…それって平和島津軽の事か?そいつの事知ってんのか!?」
あまりにも急な事だったから、俺は頭をコクコクと縦に動かし頷く事しかできなかった。

ーあぁ、こいつ津軽じゃないんだ。

その考えが頭に思いついた瞬間、さっきまで凄く上がっていた気分が急に沈んだ。

ー色素の抜けた金色の髪や、スラッとした顔立ちなんか津軽に凄くそっくりだなぁ。

そんな考えを巡らせていると、目の前の男がまた口を開いた。

「…なぁ、その平和島津軽って奴は今どこにいるのか知ってるのか?」

「…津軽は…もう…『ぐぅ〜』」

目の前の男の質問に答えようとした瞬間、どこからか腹の虫が鳴く音がした。
明らかに自分のものではないと思い、目の前の男を見ると、顔を真っ赤にしていた。

ーあぁ!この人、腹減ってるんだ!

俺は、目の前の男に優しく笑いかてやった。

「ははっ、あなた腹減ってるんでしょ?その話はお昼を食べながらにしましょう!ちょうどこの近くに俺の家があるんで。どうします?」

「…いいのか?」

「はい、全然構いませんけど?」

「…じゃぁ、遠慮なく…。」


そういうと津軽によく似た男は、俺の後を着いて来た。

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