魚座

□処処に啼鳥を聞く
1ページ/1ページ


愛されていない、とは思わなかった。
優しい父さんはちゃんとあたしを見てくれた。
優しい優しい父さん。

ただ、それ以上にアルバフィカが大切だったのだと思う。
父であり、兄であり、師なのだから当然だと思う。

血が繋がっているアニクスィと
文字通り同じ血が流れているアルバフィカと。

比べるのが惨めに感じる程に父さんとアルバフィカの絆は強いと思えた。あたしと父さんより二人は親子に見えたから。


「比べる事はできない、って言うんでしょ、きっと。」
紅い花びらが舞うそこに眠る父さんの墓標に呟いた。

申し訳なさそうに目を細めて笑う顔が思い浮かんで流れた。



「父さんはずるいね。アルバフィカをずっと絆で結ぶんだから。」
アルバフィカはずっと父さんが残した一言だけを大切にしてる。

例えその先に絶望しかない未来が待っているとしても。




「だからあたしの言葉はアルバフィカには響かないんだね」





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ