百神二次
□いろいろ
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アレスとペルセウス
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「なぜあれを守ろうとする。」
不器用でぶっきらぼうなアレスの問いかけは、いつも通り唐突なものだった。
あれとは一体なんのことだろうとペルセウスがその視線の先を辿っていくと、そこにいたのはアイギスを構えたアテナとそれに果敢に挑戦する一人の少女。
アレスが指すのは二人のどちらのことだろうか。
判然としない問いかけの対象にペルセウスが首を傾げていると、珍しくアレスが返答を待たずに言葉を継いだ。
「あいつは、アテナはお前より強い。お前が守ろうとする必要などない。」
そこでやっとアレスの言わんとするところが分かり、ペルセウスは苦笑する。
彼は先日ペルセウスがアテナを魔神から庇おうとして怪我を負ったことを責めているのだろう。
「強いとか弱いとかは関係ないんだ。大切な相手を、自分の手で守りたいんだよ。」
ペルセウスの返答にアレスは気に食わないといった様子で顔をしかめた。
「理解できん。」
「そうだね。アレスにはきっと分からない。分からなくて、良いと思うよ。」
それは、弱い自分の精一杯の虚勢で、敵対する全てを焼き払う烈火のようなアレスには理解出来るとは思えなかったし、理解してほしくなかった。
きっとアレスなら守りたいなどいちいち思わなくても、大切なものを守って行けるだろう。
「僕は弱いからなぁ。」
「…私はお前のことを弱いとは思わないが。」
口をついた弱音に、思わぬ返答が返ってきた。
思わずアレスを凝視すると、なんだその間抜けな顔はと呆れられた。
「だって、アレスが変なこと言うから、面食らったんだよ。」
「変なことを言った覚えはないぞ。
確かにお前は私には勝てないが、少なくとも強くあろうと努力している。
その努力を私は評価している。」
「そ、そんなことないよ…」
「アテナも、お前のことを誉めていた。」
いつもの無口っぷりはどこに行ったのか、随分とおしゃべりなアレスの直球の誉め言葉に頬に血が上るのを感じる。
誰かに誉められて赤面するなんて、まるで子供のようで恥ずかしい。
でも、悪い気はしなかった。
「誉めてくれてありがとうアレス。
君の評価に値するようにこれからも腕を磨くよ。」
なんとか普段のペースを取り戻して、アレスににっこり笑いかける。
「ということで、アテナたちが一段落ついたら、試合をしないかい?」
「ふん、いいだろう。手加減はしないぞ。」
こちらの誘いににやりと笑ってみせるアレスの向こうで、アイギスに阻まれた少女が尻餅をつくのが見えた。
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お兄ちゃんとお姉ちゃんに誉められて照れる弟の図