SHORT
□そんなお前が好きや
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「なまえ〜!」
教室で荷物整理をしていると、どこからともなくしてくるあいつの媚びたような声。
はぁ…またあいつの相手をしなきゃいけない訳ですか…。
後ろを振り向くと走ってくる謙也。
「…なに?」
「好きや!」
「そ。」
それだけ返事をすると私は部活に行こうと準備を再開する。
「ちょ、ちょい!もうちょい反応してくれてもええやん!」
「私忙しくてさ、何て言ったか忘れちゃった。ごめん、もう一回言ってくれる?」
「う゛っ…」
質問すると黙って赤くなる。
このヘタレ。
3−2、忍足謙也。
クラスの人気者で明るくていいやつだと評判。
だけどあたしはそういうやつが大嫌いだ。
つまりクラスの人気者、中心的存在の人は好きではないってこと。
初めて謙也に告白された時は驚いた。
あの人気者の忍足が私みたいな地味女に告白してきたから。
でも私なんかじゃ釣り合わないと思ったし、第一好きな人がいるからと断った。
そこまではよかった。
それから毎日のごとく好きや好きやと言い寄ってきて、暇さえあれば私の元へ走ってくる。
正直、いい加減にしてほしい!
あたしは、この怒りをしずめるためにいつもの場所へ向かった。
…彼はいるだろうか。