キッド海賊団@

□知らぬ間の出逢い
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引き摺られるように船へと連れて行かれるのは二度目のこと。
夜中と言うこともあり、船は静まり返っている。
そんな静寂の中を進んで行き、連れられてきたのはこれまた二度目のキッドの部屋。
空いてる部屋がないため、今夜はここで寝ろと言われた。
キッドの部屋で2人きり。
 
「変なことしないでよ…? 」
 
密室に男性と2人きりという状態が初体験のため、一応警戒しておく。
すると、キッドは鼻で軽く笑ってからひらひらと手を振って部屋を出て行ってしまった。
一体なんの目的で船になんて乗せたのだろうか…。
自分では最大限の地味さをアピールしていたというのに。
大きなキングサイズのベッドに寝るのは流石に出来ず、散らかっていたソファに寝ることにする。
服やら地図やらで埋め尽くされたソファ。
それを全て床に移動させ、漸く眠れるだけのスペースが出来た。
 
「ふぅ、疲れた…」
 
自前の毛布を被って眠りに就こうとすると、出て行ったはずのキッドが戻ってきた。
手には酒瓶。既に蓋は空いてるため、床にコルクが増えることはなさそうだ。
きっと、違う部屋の床に転がっているんだろうが…。
掃除とかは一体誰がしているんだ、と少し心配になった。
とりあえず、明日起きてから全てを考えようと目を閉じる。
ベッドで寝るはずのキッドの気配が近付いてきたことに思わず身体を固くした。
 
「おい……素顔見せろ…」
 
「ちょっ!? 」
 
何をされるのかと思えば掛けていたダサい眼鏡を奪われた。
目が悪くて掛けていたわけじゃないため、目の前のキッドの顔がよく見える。
恐い。その大きな口で一飲みにされそうだ。
恐怖でキッドの顔を見たまま固まっていると、顎を掴まれて上を向かされる。
じろじろと顔を見られ、居心地はよくない。
 
「ふんっ…こんなもん必要ねェだろ……外してろ」
 
「返して!! 私は地味でいたいの!! 」
 
「船長命令だ、この部屋にいる時だけは外せ」
 
キッドは奪った眼鏡をぽーいっと部屋の隅に投げ捨てた。
拾いに行こうと立ち上がったラミルを無理矢理ソファに押し倒す。
目の前にキッドがいては立ち上がれない、逃げられない。
何も言わずにジッと見つめられているとわかり、ラミルが不思議そうな顔をする。
キッドの顔が段々近付いてきたことで何をしようとしてるのか理解して、思わず頭突きをかました。
手も足も塞がれていたので後は頭を使うしかなかったのだ。
かなり痛かったが、身を守るため仕方ない。
 
「てんめぇ…いきなり頭突きかますたァいい度胸じゃねェか…」
 
「あんたこそ!! 変なことすんなって言ったでしょ!? 」
 
蹴ろうと思って伸ばした脚はキッドの手によって掴まれる。
どうやらムキにさせてしまったようだ。
グッと強く顎を掴まれて無理矢理唇を奪われた。
一瞬何が起きたのかわからず、放心状態となっていたラミル。
離れていくキッドがスローモーションのように見える。
 
「キスくらい減るもんじゃねェだろ……まさか初めてだったのか?」
 
ニヤリと口端を上げていやらしく笑うキッド。
頭が漸く働くようになり、何が起こったか理解したラミルはぎりぎりと拳を握っていた。
出来るものなら目の前の人物を殴りたい。
必死にそれを抑えながらキッと睨み付ける。
 
「くたばれ、菊頭ッ!! 」
 
怖いもの知らずとはまさにラミルのことだった。
暴言を吐いた後は頭まで毛布を被って無理矢理眠りに就く。
キッドはラミルの暴言に気にする様子もなく、機嫌良く酒を飲みながらニヤリとしていた。
自分のベッドに腰掛け、芋虫状態のラミルを眺めながら数週間前のことを思い出す。
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