短編

□忘れられない一日の翌日
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1時間目の終わり頃にはまだ、珍しいこともあるもんだな、くらいに思っていた。
しかし2時間目、3時間目、4時間目と異変は続き、クラスメイト達も徐々に気づいたらしく教室全体がざわざわしてきた。


「宍戸、ジローの奴何かあったのかよ」

「宍戸君、ジロちゃんどうしちゃったの?」


幼馴染で部活も一緒だからという理由で皆が俺に訊いてくるけど、俺にだってわかりゃしねえよ。
あのジローが、授業中に一度も居眠りしない理由なんて。
しかも寝ないからといってちゃんと授業を受けてるわけでもなく、完全にうわの空。魂が抜けたみたいになってやがる。

そういや今日はジローの奴珍しく朝練に参加してたけど、終始ぼーっとしててほとんど練習になってなかった。
その時は単に眠いからだと思ってたし、跡部も「来ただけマシだ」とか言ってお咎めなし。
まぁ、あいつがジローに甘いのはいつものことだけどな。



「ジロー、メシ食おうぜ」

「………」

「ジロー!」

「あ……どうしたの、宍戸」

「どうしたのじゃねえよ、メシだメシ。もう昼休みだぞ」

「あ、そう」

「弁当は?」

「忘れた」

「………」


しょうがねえから食堂に引っ張っていく。
しかも金も持ってないとか言いやがるから奢ってやるハメになった。


「ジロー、こぼしてる」

「んー……」

「あのなぁ……今日お前おかしいぞ。何かあったのか? クラスの奴らも心配してるぜ」

「うん、まあ……あったっちゃあ、あったのかな……でも、もしかしたら夢だったのかも……」

「はっ?」

「いや、でも夢じゃないよな……だってちゃんと味がしたもんね、グリーンアップルの……」


なんだか一人でぶつぶつ言い始めた。
しかもなぜか顔が赤くなってるし、大丈夫かこいつ?


「とりあえず、夢でもなんでもいいから何があったのか言ってみろよ」

「あのねー……」

「おう」

「俺さー……」

「ああ、早く言えよ」

「丸井君とキスしちゃった」

「………」







聞くんじゃなかった。
心配して世話焼いて昼メシまでおごった俺、馬鹿みてえじゃん。
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