短編*

□霧の中で逢いましょう
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濃い霧の中で
精神内で、不思議な人に出会いました。


「……おちび」

「あれ、ししょー。
いい加減人の夢に現れるの止めてもらえません?」

「おやおや。
しかしそれは難しいですね。
意識が覚醒した状態で僕と精神を繋ごうなど、並大抵の器では出来ませんから」

「そーですかー。
なら用件さっさと言っちゃって下さーい」

骸は眼の光りを鋭くして言った。

「僕は白蘭の真相を暴きます。
計画は大体進んでいるが、謎が多すぎる。
大丈夫だとは思いますが、後衛に回って下さい」

「あー、つまり師匠の骨を拾えば良いんですね」

「違います」

精神の中でもご丁寧に三叉の槍を刺してくる。

「ゲロッ
分かりましたよー、フォローですね、フォロー」

「分かってるんならよろしいが。
決行の時にまた来ます」

「りょーかいですー」

骸の姿は霧の中に消えたのだった。

「これ、悪夢の類いに入りますよねー……」

いつもなら霧が晴れて、大体眼が覚めてしまうのだが、今日はそうならなかった。
脱出しようと思えば出来ただろうが、この霧は自分に害を成す物ではないので放っておいた。

するとあちらからさっき見た人影が現れたので、フランはうんざりしたように叫んだ。

「師匠まだ居るんですかー?
早くミーを出して下さいよー」

「…………」

いくら待っても返事は来ない。
ただただ、その影はゆっくりと近づくのみだ。

「師匠ー?」

「……え?」

「し……しょ?」

「……あ、の……」


そこに居たのは師匠と同じ、トロピカルな髪形をした、女だった。

フランが咄嗟に挙げた可能性は四つ。

@師匠の幻覚

A師匠が血迷って女装

B自分の夢

C霧の精霊



「……誰?」

霧の精霊(仮)に名前を聞かれた。
これは素直に答えるべきだろうか。
ただ単に師匠の悪戯かもしれないし。

「ミーはフランですけどー……
そっちは誰ですか?」

「私、は……クローム
……クローム髑髏」

「……あ」

クローム髑髏。
その名前はなんとなくだが知っていた。
ということで四つの可能性は全てボツだったわけだ。

「なんでここに?」

「骸様に呼ばれて……」

「ほぉお。
師匠、人使い荒すぎですー」

それともそれだけ忙しいのだろうか。
色々と考え込んでいると、微かにクロームが声を出した。

「……あの」

「はいー?」

「……イタリア語を……教えて、くれませんか?」

「イタリア語ですか?
良いですけど、なんでですー?」

クロームはちょっと肌を染めて、小さな声で教えてくれた。
小さな願望で、フランは呆気に取られたのだった。

「ミーは構いませんけどー……」

「……ありがと」

それからは毎回、骸と精神内で有った後にレッスンが行われた。
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