【夢小説】入隊しました...*【リボーン】

□薔薇と霞草
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ゆらゆらと揺れるハンモックは、身体を包んでくれるようで思った以上に寝心地が良かった。
でも、どうしても自分の斜め下で寝息をたてている気配に気になってしまう。






夢を見た。


雪が降った朝だった。
幼い自分は妹達と、パパの帰りを待っていた。
ちいさい身を寄せ、かじかむ手を噛むように息を当てて待っていた。
ママはいつパパは帰ってくるの、と聞くたびにもう少しよ、と言った。
そうしてママは死んでいった。

「パパ……?」

見覚えのある人影に我先にと走り寄った。

「パパ!!パパ!!」
「パパだ!!おねーちゃん、パパだよ」

ふと違和感を覚えた。

「二人は先に帰ってなさい」
「嫌だ!!パパに会うんだ」
「おねーちゃん、なんでいじわる言うの?パパに会う!!」
「いいから!!」

私の剣幕に驚いて、妹達はしぶしぶ帰っていった。

「パパ……!!」
「ありがとな……レイ」

パパは重傷だった。
ふと私は視線をずらすと、白地に赤い斑点が眼に飛び込んだ。
それは白い雪に落ちた、パパの血だった。
その鮮明な赤と白が妙に頭に焼き付いて、毒々しくいっそ艶かしく美しい位で、身体を硬直させた。
頭が真っ白になって、くらくらした。
こんなの私が望んでいたパパとの再会じゃない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

嫌だよ……






「いや……ぁ……」

ぼんやりと目が覚めた。
自分を見下ろしているフランとベル、そしてルッスーリアを見て、状況を把握するのに時間が掛かった。

「……ぁれ?どうしたの……」

「どうしたのじゃねーだろ。
すっげぇ脂汗。こっちがどうしたって聞きてぇよ」

ベルが口を開くとルッスーリアも続けた。

「フランちゃんがレイちゃんの様子が変だって騒いでね?
なんかうなされてたみたいだけど……」

「あぁ……」

私か状況を悟って頭(かぶり)を振った。

「なんでもないです……
ちょっと嫌な夢を見ただけなんで」

「そう……」

ルッスーリアはなお心配そうに言った。

「あんまり無理しないのよ」

「了解です」

ベルがそれならとばかりに両手を此方に出した。

「じゃあ、ほら」

「は……?」

「俺んとこ来いよ。
オヒメサマ抱っこで連れてってやるから」

「なっ……!!」

抵抗する私を難なく持ち上げて、スタスタと部屋を出ていってしまう。

「や、止めて……」

「こーしてると昨日みたいだよな?」

しししっと笑う顔は無邪気で、ちょっと顔が火照った気がした。

「ベルセンパーイ」

後ろからとたとたフランがついてきた。

「朝から何やってんですかー。
ほらー嫌がってるしー」

「ちびカエルは黙ってろっつの。
別に朝っぱらからやらかすつもりはねぇし。
嫌がってないよな??」

「……え?」

さっきから抵抗はしてるけど。
でも本気で嫌かと言うとそうでもないような……

「ししっ♪ほら。
俺どうせ今日オフだし?」

「それはミーも同じですー」

ベルに担がれて部屋に入るとき、一瞬フランがふてくされたような顔が見えた。
すぐドアが閉められたので良くは見えなかったのだが。
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