Present
□この奇跡に感謝を。
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僕は奇跡だと思っている。どんな幸福よりも、どんな偶然よりも、どんな運命よりも、奇跡だと感じ、確信している。傍にいるだけで幸せで、愛しくて、温かくて、泣きたくて。それは他の誰かでは有り得ないことだ。世界がたとえ逆転しても、心は更地になるだけで、そこに何かが生まれることは決してない。
ありがとう。
この上ないプレゼントを、僕の傍に落としてくれて、ありがとう。
誰でもない誰かに、感謝する。そして――、
「ありがとう、ライリ」
暑苦しいとタイを緩めるライリに、僕はそっと囁いた。
すると一瞬、驚いたような顔をしたライリは、すぐにその表情を笑顔に変えた。
その笑顔すら、僕にとっては最高の贈り物だと、彼は思いもしないのだろう。
君の存在がどれほど僕を救っているのか、君は考えもしないのだろう。
「馬鹿だなお前。それを言うなら、おめでとう、だろ?」
「……そうだね。誕生日おめでとう、ライリ」
そして、ありがとう。この世に――僕の傍に生まれてきてくれて。
「ありがとう、アルト。これからもよろしくな」
そう言ったライリに、僕は貪欲に頷いた。
「これから先もずっと、君におめでとうを贈り続けるからね」
僕に返せるのはそれくらい。君から与えられた奇跡と比べれば塵にもならないものだけれど。それでもどうか、受け取って。エゴでしかない、この感謝を――。
ありがとう、僕と出会ってくれて。
僕はこの奇跡を、一生忘れない。
End.