Present

□この奇跡に感謝を。
1ページ/1ページ

 僕は奇跡だと思っている。どんな幸福よりも、どんな偶然よりも、どんな運命よりも、奇跡だと感じ、確信している。傍にいるだけで幸せで、愛しくて、温かくて、泣きたくて。それは他の誰かでは有り得ないことだ。世界がたとえ逆転しても、心は更地になるだけで、そこに何かが生まれることは決してない。

 ありがとう。

 この上ないプレゼントを、僕の傍に落としてくれて、ありがとう。

 誰でもない誰かに、感謝する。そして――、

「ありがとう、ライリ」

 暑苦しいとタイを緩めるライリに、僕はそっと囁いた。

 すると一瞬、驚いたような顔をしたライリは、すぐにその表情を笑顔に変えた。

 その笑顔すら、僕にとっては最高の贈り物だと、彼は思いもしないのだろう。

 君の存在がどれほど僕を救っているのか、君は考えもしないのだろう。

「馬鹿だなお前。それを言うなら、おめでとう、だろ?」

「……そうだね。誕生日おめでとう、ライリ」

 そして、ありがとう。この世に――僕の傍に生まれてきてくれて。

「ありがとう、アルト。これからもよろしくな」

 そう言ったライリに、僕は貪欲に頷いた。

「これから先もずっと、君におめでとうを贈り続けるからね」

 僕に返せるのはそれくらい。君から与えられた奇跡と比べれば塵にもならないものだけれど。それでもどうか、受け取って。エゴでしかない、この感謝を――。



 ありがとう、僕と出会ってくれて。

 僕はこの奇跡を、一生忘れない。



 End.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ