僕はオトコに生まれたかった。
□僕はオンナが嫌いだ。
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僕は女が嫌いだ。
かと言って男が好きなわけじゃない。
いや、待て。ある意味僕は男好きかもしれない。男好き、というのはいささか語弊があると思うが。
僕には心に決めた人がいる。
たった一人の人が。
男とか女とか、そんなの関係ない。
ずっと昔から、ずっとずっと昔から、心に決めた唯一の人がいる。
それこそ、この世に生まれ落ちる前から。
――僕にはそう、前世の記憶がある。
その当時、僕はアルトと呼ばれていて、アイツはライリと呼ばれていた。
僕たちはともに育ち、ともに学び、ともに笑い合って過ごした。
いつからだったのかはわからない。互いに恋情というものが芽生え始めていたのは。
きっかけなんて思い出せないほど極自然に<恋人>になっていた。――僕たちは、男同士だったのだけれど。
その時代、同性同士の恋愛というのは認める認めないの問題ではないくらい、いわばタブーだった。
だから僕たちは隠し通した。
決して恥じ入ることのない想いを、隠し通した。
けれど秘密とはばれるもので。
僕たちは引き離され、アイツは僕の手の届かないところへ行ってしまった。
それでも、信じていた。僕がアイツを想うように、アイツも僕を想ってくれているのだと。しかし一つの
報せが、僕のすべてを打ち砕いた。
『結婚しました。――ライリ』
ああ。
ああ、やっぱり。
やっぱり君も、女が良かったんだ。
所詮君も、女が良かったんだ。
悲しい。
悲しい。
悲しい。
いっそ憎んでしまいたいくらいに、悲しい。
けれど、僕の心にだけ置き去りにされてしまった想いが、それを許してはくれなかった。
――僕が女に生まれていたら。
不意に過ぎった考えを、すぐに思考から放り投げた。
ふざけんな。
性別を前提にしなければならない愛なんて、僕はいらない。
そんな愛、僕はいらない。
だから、誓った。
生まれ変わったら、今度こそ、君と共にいる。
今度こそ、君の傍を離れない。
そして今度も、男と男のままで会うんだ、と。
だって悔しいじゃないか。
性別の壁に負けたままだなんて。