Without you
□第2夜 the world loved by gods (2) 影を司る者
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「兄ちゃんら!りんごはいらんかね!」
八百屋の前を通りかかると、声をかけられた。
声をかけて来たおじさんは赤いりんごを持っている。
近くにいた小狼がすぐに反応した。
「それ、りんごですか?」
「これがりんご以外のなんだっちゅうんだ!」
小狼と、ファイは不思議そうに並べられたりんごを見る。
「小狼君の世界じゃ、こんなんじゃなかったのーー?」
「形はこうなんですけど、もっと色が薄い黄色で…」
「そりゃ梨だろ。」
「梨だな。」
後ろにいた黒鋼と遥も話に加わってくる。
「いえ。ナシはもっと赤くてヘタが上にあって…」
「それラキの実じゃない?」
「ラキの実はピンクじゃ?」
「ピンクは桃だろ。」
四人の頭に浮かんでいる果物はそれぞれ全く違うようだ。話せば話すほどわけがわからなくなっていく。
「で!いるのか!いらんのか!」
どこかおかしい四人の会話に痺れを切らし、おじさんは体を乗り出して来た。
「いるーーー!」
「えっ!?」
「まいどー。」
何時の間にか遥の頭の上に移動していたモコナが勝手に決めてしまった。
暫く歩き、川にかかった橋の上で遥達はりんごを食べる。
「そういえば、まだ聞いていなかったねーー。小狼君はどうやってあの次元の魔女のところに来たのかなーー?」
りんごを食べ終わり、一息ついたところでファイが尋ねてきた。
「俺のいた国の、神官様に送っていただいたんです。」
「凄いねーー、その神官さん。一人でも大変なのに、二人も同時に送るなんて。」
ファイは凄いねーと、感心したようだ。
遥というと興味がないのかぼーっと、川のむこうを眺めている。
「黒たんはーー?」
「黒鋼だ!
うちの国の姫に飛ばされたんだよ、無理矢理!」
しかられんぼだーとからかうファイとモコナに黒鋼は青筋を立てた。
「うるせぇー!そういうお前はどうなんだよ!」
「俺?俺は自分でいったよーーー。」
「自分でですか?」
小狼は驚いている。
「そーーだよー。」
「だったらあの魔女頼るこたねぇじゃねぇか。自分でなんとかできるだろ。」
「無理だよーー。俺の魔力を総動員しても、一回他の世界に渡るので精一杯だもん。」
ファイは説明した。
小狼を送った人も、黒鋼を送った人も相当な魔力の持ち主であろう。
けれどそんな彼らでも異世界へ誰かを渡すのは難しく、できても精々一、二回。
だから小狼のいた国の神官は侑子のもとへ送ったのだ。
サクラの羽を集めるには多くの世界を渡らねばならないのだから。
「そうなんですか…」
「で、遥君はーー?」
遥は目線だけファイ達に向けて答える。
「俺も自力だな。」
「お前も何度もは異世界へ渡れネェのかよ。」
「いや。できなかないが…
めんどーだし…」
黒鋼や小狼は目が点だ。
「できるのかよ!」
「あぁ。」
「お前なぁ、だったらな「きゃぁぁぁぁあああ!!!」
突然あがった悲鳴によって黒鋼の言葉は遮られた。
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