Without you
□第2夜 the world loved by gods (1) 古き友との再会
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『やっぱりここにいた。 好きだよな、花の木に上るの。』
言われて始めて、俺は桜の木の上にいること気がついた。
どうりで花の香りが強いわけだ。
『領主と話はついたのか?』
『あぁ。 協力してくれるってさ。』
お前が木に登り、俺の隣に腰掛ける。
『まったく、面倒ごとは全部俺に投げやがって…』
『こういうのは洋のほうが得意だろ。』
『褒めてるのか?まぁ確かにそうだけどさ… だったらもっと感謝しろよ。』
『あー。ありがとうございますーー。』
気持ちこもってねぇとぶつくさ言うお前に、自然と笑顔が浮かぶのが自分でもわかる。
ーーーーフワッ
『春とはいっても、この国の夜はまだ冷えるらしいからな。 着とけ。』
掛けられた上着からはお前の匂いがした。
ーーー温かい…
月の光に照らされたお前の横顔を眺める。
堀が深く整った顔立ち。
赤い隻眼。
そう、隻眼______。
急にこちらを向いたお前の視線と俺の視線が交わった。
『遥、今ろくでもないこと考えただろ。』
鋭くなる視線。
何も言わない俺に、お前はため息をついた。
桜の花弁が風に吹かれて舞っている。
『今、俺が遥とここにいるのは俺自身の意志だ。』
花吹雪が強くなっていく。
『一度も後悔なんてしたことない。』
目の前にはお前と、お前を巻き込むように吹く桜。
『逆に俺は怖いよ。』
段々と花吹雪の中に見えなくなるお前の姿。
『遥が_____に、いな____ってしまい____で…』
段々と吹雪の音で聞こえなくなるお前の声。
『怖___いんだ…』
強く、強く、舞い、吹雪き続ける桜の花弁。
『______んだ…』
お前の姿も、声も、全て儚い花吹雪に飲み込まれた。
夢だ
これは夢
現実ではない
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