Without you

□第1夜 the world everything started (2) 仮面の人
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「探している人がいる。先ほどまでの話しは聞いていた。彼等と共に異世界へ渡りたい。」







その言葉をファイは怪訝に思った。
魔術師であるがゆえにファイには遥の力が桁違いであるということがよく解った。
彼が自力で次元を渡れない筈が無い。



その言葉に黒鋼もまた僅かに違和感を感じていた。
狂おしいほど叶えたい願いであるはずなのに、そう告げたときに彼の金と銀の双眼からは感情というものを全く感じなかったのだ。





そんな二人の心情を悟ってか、遥は二人を一瞥するが、構わず続けた。



「対価はなんだ。」





一瞬、侑子と遥の視線が意味深に交わる。





「対価は…」



憂いを帯びた瞳と何かを悟ったような瞳。









「対価は貴方の時間よ。」







「時間、ですか?」


「どういうことだよ、そりゃ?」



小狼と黒鋼は声をあげた。
声にこそは出さなかったがファイも不思議そうに首を傾げている。



「これから旅をするにあたって、遥、あなたはできる限り他の三人の願いを叶えるために協力しなければならない。
そして例え自らの願いが叶おうとも、三人の願いが叶うまで自由になることは出来ない。」




「何でこいつだけ、一番大切なものじゃねーんだよ。」



黒鋼は不満気だ。


関係性という重すぎる対価を払った小狼も、彼の対価はおかしく思えた。




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