Without you
□第2夜 the world loved by gods (1) 古き友との再会
1ページ/12ページ
穏やかな風で頬を撫でられるような感触に、俺は瞳を開いた。
むせかえるような春の香り。
月明かりの下、淡く光る花々に抱かれているかのような心地良さ。
そして何より俺の心は驚くほど穏やかだった。
ーーーあぁ、そうか
唐突に気づかされた。
ーーーこれは、"夢" か
今の俺が心穏やかでいられるはずがないじゃないか。
まるでお前が隣にいるような。
胸の奥がズキリと痛んだ。
『遥っ』
思考を遮った声。
あり得ない。
『洋___』
見下ろすと俺のことを見上げるお前がいた。
これは夢で、
現実は全く違うはずで、
いつかの俺自身の記憶であって、
このお前は本当であって本当でなくて、
わかってる
わかってる
それでもこの記憶の日の俺にとっては本当のお前であるはずで、
例え本当でないとしても、
目の前にお前がいて、
ちゃんと呼吸をしているということに、
熱い何かがこみ上げてきそうだ。
.