Without you
□第1夜 the world everything started (2) 仮面の人
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「久しぶりね、主[ロード]よ。」
侑子の言葉に願いを叶える店に降りたった彼は、異形の仮面を外した。
仮面は宙に散っていく。
「俺は随分長い間眠っていたのだな。」
その男は赤みがかった黒髪をし、身長も黒鋼ほどではないにしろ高かった。
けっして中性的であるわけではないが、目を見張るほど美しい顔立ち。
そして、何よりも金と銀のオッドアイがその男の存在感をより圧倒的なものとしている。
「時がきたのか…」
「えぇ。旅だちの時が…」
自分達に対してと明らかに違う侑子の態度に、小狼たちは驚きを浮かべる。
またファイは魔術師として、黒鋼は常に戦いに身をおく者として彼の威圧感に神経を張り詰めさせた。
「遥だ。『主』とは呼ぶな。」
侑子にそう言うと、遥は小狼たちに目を移した。
ーーー創られた者、欺く者、戦う者、か…
目を細める。
ーーー先に待つは希望か絶望か、始まるのは喜劇か悲劇か…
遥は自嘲的な笑みを浮かべた。
ーーーまぁ、どうなろうと俺には関わりの無いこと。良い暇つぶしにはなりそうだがな。
そんな遥を見て侑子は顔を曇らせたが、言葉を発する。
「じゃあ遥、ここに来たということは貴方に願いがあるということ。願いは何かしら?
貴方の願い、叶えましょう…」
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