短文

□僕のともだち
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どれくらい、歩いたでしょうか。
「もう少しですよ」
ミミは先ほどからそれしか言いません。
ほんの少し疲れてきた和馬くんは、ふわふわの羽根を掴んでこう言いました。
「正直に言わないと、バラバラにほどいちゃうよ?」
「かずまくん!」
「じょうだん」
和馬くんの軽いジョークに、気の弱いミミは長い耳をブルッと震わせます。
「着きましたっ、今度こそ本当です!」
「…へぇ」
そこはまるで昔聞いたおとぎばなしの国のままでした。
見下ろした丘には、なだらかな草原や畑が続き、金色の真ん丸お月様が、黒い森に優しい光を落としています。
かわいい風の妖精が、そよそよとかずまくんの服の裾やミミの羽根をゆらします。
「ここが、月ハネ王国です」
「それで? 強くて悪い怪物って言うのはどこに居るの?」
見たところ、月ハネ王国は平和そのものでした。
豊かな大地と穏やかな気候。作物がよく育ちそうです。
それなのにミミは悲しそうに首を振りました。
「その怪物は、お城の近くで暴れているんです。」
ふたりは、お城へと歩き出しました。
「月ハネ王国は王政なんだ?」
「え? う、うん…そうです」
「王様が法律を決めてるんだね。立憲政治の社会で育ってきた僕としては君主制とかは多少古くさい念も払えないんだけど、まぁそこはお国柄だもんね。やっぱり臣下とかいるの? 陰謀渦巻く血みどろの駆け引きが見られたら嬉しいなぁ あ、今の王って一般市民からの評判は? 表面上だけ外ヅラが良いタイプの――」
「かっかずまくん! ほら夜が明けてきましたよ!」
真顔でしゃべり続ける和馬くんの質問を止めようと、ミミは必死に腕をパタパタと動かしました。
「…あ、ほんとだ」
「……ふぅ」
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