短文

□聖母イリスの話
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 触手は彼女の衣服のすそから、這うようにして中へと侵入してきた、体中をまさぐる感覚に、すぐさま嫌悪感が芽生える。
「は、離して! お願い!」
 触手は彼女の胸の先端を探り当てると、まるでそこが敏感な場所だと知っているかのようにやわやわと刺激を与え始めた。
「あ…やだ…」
 くにゅくにゅといじられているのを自覚した瞬間、臍の奥がキュッと疼く。
 吸盤がついた触手が、下着を押し分けてそこに触れたとき、思わず声がこぼれおちてしまった。
「っは… あ」
 誰にも触らせたことのない場所を、悪魔のようなマモノに好きにされている。
 その羞恥と、容赦なく擦りあげられる快感で、彼女の頭は次第にボーっとしていった。
 ぬらぬらとした感触が、脇に、腹に、太ももを這い回っている。それがたまらなく気持ちが良かった。
「あっ あっ あっ」
 上ずった声が自分の物ではないように感じられる。
「んっ、っ!」
 我慢できなくなったイリスはさらなる快感を追い求めるように、自ら擦りつけ始めた。そこに少年の少しだけあきれたような声がかかる。
「淫魔の技を借りてるとは言え、ずいぶんと淫乱だなぁ。あ、でも処女なんだ。うん、部屋は新居に限るからね」
「え? あっ、あはああああああ!」
 ズブリと侵入してきた極太のそれに、イリスは歓喜の声をあげる。のけぞるように白いのど元をさらしたかと思うと、ビクビクと痙攣した。
「まずは1回目。さぁ、これからだよ」

 最初は官能的だった刺激も、長期にわたれば責め苦でしかなくなっていった。
 もう何度絶頂を迎えただろう。身も心もズタズタになったイリスは、逆さづりの状態のまま泣き笑いの表情をとった。
「あ、もうやめ、おかしくなっちゃ…あ、あ」
 ずぶずぶと触手を掴んで抜き差ししていた少年は、その言葉に少しだけ冷めたような顔をしてアッサリと彼女を解放した。
「ま、こんなもんか」
「あぐっ」
 ドサリと地面に落とされた彼女を見下ろすように、少年は笑みを浮かべる。
「君の中に、無数の『ヤミの種』を植え付けた」
「え…?」
 淫魔の技から解放され、少しだけ頭のハッキリしてきたイリスは思わず聞き返した。言われてみれば確かに下腹部に圧迫感を感じる。
「これから君はそれを産まなくてはいけない。1万個『無傷な状態で』産み落とさないと、死ぬことも気が狂うことも許さないよ」
 降りてきた少年は、いまだ動けずにいるイリスの額に指をピッと当てた。触れられている箇所から不思議な光が発せられ、じんわりと身体を包み込んでいく。
「それじゃがんばってね、聖母イリス。君は歴史の最初の1ページになれるんだ。おめでとう」
 指をパチンと鳴らした少年は、イリスを散々犯した悪魔の生き物と共に消えうせた。
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