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□頂き物 もじ
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■解説

いつも拍手で暖かいコメントをくださる桜さまより頂きました!

ちょっと前情報として…
えにぃがボソリとどこぞでつぶやいた
『ig世界において、幾重に広がる未来の選択肢の中に、自己犠牲ルートを選んだリオンも居る→イヅキが発狂して魔王化ルートも無くはない』
っていう発言にビビビと反応してくれたらしく、一文を書いてもらっちゃいました。

なのでこれはあくまでも「…という未来があるかもしれない」っていう前提でお読みくださいませ。




剣の斬り結ぶ音が響く。
イヅキの白い剣と、仮面の男の人が持つ黒い剣。その刀身が交わり、一瞬ののち離れる。先ほどから目の前で繰り返されている光景にボクたちは言葉もなくただ見つめるしかなかった。

袈裟切り、薙ぎ払い、突き……相手に反撃の暇を与えないよう次々攻撃を繰り出すイヅキ。
でも彼は息もつかせぬ攻撃をものともせず、いとも簡単に避けて見せる。
……まるで、どこでどの攻撃が来るのか分かっているみたいに。
そして絶妙なタイミングで反撃の一手を放つ。それは不思議なくらいに正確にイヅキの体を傷つけていく。もちろんイヅキは避けようとするけれど、間に合わない。確実に当たるよう狙って攻撃をしているんだ、間違いなく。
イヅキの思考を読んでいるかのように動く仮面の人。一体何者なんだろう?こんなこと、普通の人にはできっこないよ!

ぎゅうと手を握りしめる。嫌な汗が吹き出して、手のひらを湿らせていく。
目の前で行われている剣戦は徐々にイヅキが不利になっていった。
自分の攻撃は避けられ当たらないのに、相手のはいとも簡単に自分に命中する。そんな状況に焦りを隠せなくなったイヅキは攻撃の手を増していくけど、その分隙が大きい大振りのものになってしまう。

だから――
「っ!」
一瞬の隙を突いて横薙ぎの一閃。手元を狙ったそれに対応しようと剣を振るうイヅキだったけど遅く、キィンと澄んだ音がして剣が弾き飛ばされてしまった。目を見開くイヅキとボクたち。
仮面の男は口角を上げにやりと笑った後、武器を失って成す術をなくしたイヅキに向かって禍々しい程黒い剣を振りかぶり――。
「させないっ!」
――不自然な格好でその動きを止めた。
「ヒノエ!?」
横を見れば腕を交差させて男を睨み付けるヒノエの姿。その手からは光の反射によって輝く透明な糸がまっすぐに男の剣まで伸びていて、振り下ろそうとしていた動きをなんとか止めていた。

「リオン!エクス!」
必死の形相で叫ぶヒノエ。何を言いたいのかを悟ったボクたちは顔を見合わせ頷くと、それぞれ反対方向に飛んだ。
エクスはまっすぐに男の元へ向かい、足技を駆使して意識を反らす。その間ボクは飛んだイヅキの剣を拾い彼に渡す。そしてイヅキが止めを刺す――エクスが囮でボクとヒノエがバックアップ、イヅキが攻撃と何回かやったコンビネーションだ。今回もきっとうまくいく…!

エクスが男と交戦状態に入ったのを見てボクは地面に転がった白銀の剣を手に取る。そして能力を全開にすると大きく振りかぶって――。
「てやぁぁ!!!」
彼に投げた。能力と風に乗ったせいでスピードを増した剣はボクの声に反応し振り向いたイヅキの手中にすっぽりと収まる。彼は柄を力強く握りしめると「エクス!」と仮面の男と交戦中の仲間に声をかけた。白い髪を靡かせるエクスはその一言で全てを悟ったようで、こくりと頷くと不意にしゃがみこんだ。そしてその状態から相手の足へと向かって回し蹴りを繰り出す。

が、察していたのか素早い反応で飛び上がり避けた仮面の男。勝ち誇ったように口元が歪むけど。
「これで終りだ!」
武器を持ったイヅキが素早い動きで懐へと入り込み、下から斜め左上に剣を振るう。綺麗に軌跡を描いた刃はまっすぐ男の体へと近づいていって――当たる瞬間男は体を半回転させうまいこと攻撃を避けた。しかし全てをかわすことは叶わず、刃はそのまま顔へと近づき仮面の一部と黒いフードを切り裂いた。

はらりと切れ端が宙を舞うのを見て、はっ、と息を飲む。攻撃が避けられたからじゃない。剥がれた仮面の一部から見える赤い瞳。切り裂かれた切れ端と一緒に落ちる瞳と同じ色の髪の毛を見たから。………え?

ボクは呆然と仮面の男を見た。それはみんな同じで、事態が飲み込めないといったような顔で仮面の男と、同じ色を持つイヅキに視線を行き来させている。
…彼がイヅキと同じ色の髪と目をしている、その事実になぜか驚愕していた。同じ一族の仲間かもしれない…普通はそう考えるんだけど…。
違うって、ボクの何かがそう言っている。根拠もなにもないただの勘が訴えかけている。それにさっきからずっとあった微かな違和感が、その気持ちをより大きくさせていた。

不気味なほど静かな沈黙が場を支配する。…誰もが何も言えないままただ口をつぐむことしかできなかった。
「っははっ…」
そんな静寂を破り、笑い声を上げる仮面の男。彼は「やっぱうまくいかねぇか…」と呟き自虐的に笑う。その聞き覚えのありすぎる声と口調に、ボクたちはまたもや目を丸くする。
「やっぱり…そうでしたか…」
硬直状態からいち早く抜け出したエクスが呟いた。何かを確信したように、男を見据えて。
その言葉を聞いた仮面の男は「相変わらず鋭いな、お前は」と苦笑いを浮かべ仮面を剥ぎ取る――。
「?!」
瞬間、体に衝撃が走り、ばくんっと心臓がはね上がる。雷に打たれたかのような感じだった。
それもそのはず。だって仮面の男の素顔は、イヅキそのものだったんだから――

続く…(?)

***

終わりです!駄文失礼しましたーっ! 軽くご説明しておくと…『魔王イヅキ誕生・リオン救える方法模索→過去に戻り自分抹殺して成り代わることを考え付く→実行しようと過去イヅキ襲撃したけど見つかっちゃった!→小説へ』な感じです。
続きは考えてませんが、きっとリオンちゃんが「キミが救いたかった『リオン』はボクじゃない。ボクを救っても『リオン』を救えなかった記憶は消えるわけじゃないんだよ…』という台詞から魔王イヅキを説得してくれるはずです←

定番の中の定番、「過去の自分殺し」を主題に書いてはみましたが、なんだかキャラが違うような…??うむむ、難しいですな。
こんな小説ですがえにぃさまに捧げますー。感想苦情あったらどうぞ!(by桜)


***

苦情なんぞあるはずねーっ!!
この小説いただいてテンションあがりっぱなしでした。なにこれすごい、違和感ない。
未来イヅキがこの時代のイヅキに成り代わろうとするなら、この場に居るリオンは未来イヅキとは微妙にずれのある平行線上のリオンになるわけだから、未来イヅキと一緒にいたはずの『リオン』とはほんの少しの差だけどズレがあるわけだ。でもほんとに微々たるものだし、このラインのリオンは未来イヅキのとよく似てるから「違う!お前はリオンだ!!」とか言い出しそうでひと悶着ありそうではある。
ちなみに、この未来イヅキと一緒にいたリオンは実はまだ死んでなかったり。まぁ、生きてるとも言いがたい状況なのですが、未来イヅキと意志の疎通はできない状態。平たくいうとカミサマに近い存在になってるわけで培養液に――いやいや蛇足ですね、やめておきましょう。

そんなこんなで、妄想のたぎる小説をありがとうございました桜さま!(えにぃ)
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